株式会社スープストックトーキョーは2026年12月1日、東京・渋谷の複合施設「渋谷ストリーム」2階に、新業態「秋野テーブル」を開業する。全国の生産者とのつながりを生かした旬の料理を提供し、ランチから午後のカフェ、ディナー、夜の軽い飲酒まで対応するオールデイダイニングだ。営業時間は11時から23時まで。カウンターを中心とした客席を設け、一人での食事から友人や同僚との会食まで、幅広い利用を想定している。

スープ専門店として知られる同社だが、レストラン事業への進出は今回が初めてではない。ファミリーレストラン「100本のスプーン」をはじめ、サンドイッチ専門店「二階のサンドイッチ」など、食を通じたさまざまな業態を開発してきた。今回の秋野テーブルは、こうした経験を基盤に、オフィスワーカーをはじめとする都市生活者の食事需要へと対象を広げる取り組みと考えられる。

スープ専門店から始まった多業態展開

スープストックトーキョーの原点は、1999年にお台場のヴィーナスフォートで開業した「Soup Stock Tokyo」にある。働く女性が一人でも気軽に立ち寄り、身体に配慮した食事を楽しめる専門店として成長してきた。現在は全国約70店舗を展開し、駅ビルや商業施設を中心に日常的な食事需要を取り込んでいる。

同社の事業は、スープの店内提供だけにとどまらない。2004年には冷凍スープの通信販売を始め、2011年には冷凍スープ専門店「家で食べるスープストックトーキョー」を出店した。商品を持ち帰り、自宅で楽しむ市場へと販路を広げている。

一方、店内での食事体験を広げてきたのが、ファミリーレストラン「100本のスプーン」だ。2012年から店舗展開を始め、2015年には二子玉川ライズ・ショッピングセンターに出店。現在は二子玉川、立川、豊洲、あざみ野、東京都現代美術館などに展開し、子どもと大人が同じ食卓を楽しむレストランとして独自の位置を築いている。

Soup Stock Tokyoが一人でも利用しやすい日常の食事を提供してきたのに対し、100本のスプーンは家族で食卓を囲む時間を重視してきた。食材や料理の品質だけでなく、誰と、どのように食事を楽しむかを業態開発の中心に置いている点に、同社の特徴がある。

さらに、かき氷と日本茶を中心とした「お茶と酒 たすき」も手がけてきた。2015年に京都・祇園で開業し、季節の素材と地域の文化を組み合わせた喫茶業態として展開。2024年1月には株式会社Tune upへ事業譲渡している。

こうした経緯を踏まえると、秋野テーブルはレストラン運営に新しく挑むというより、これまで培ってきた商品開発、食材調達、店舗運営の経験を組み合わせ、新しい利用場面に対応する業態と位置づけられる。

ファミリー中心のレストランから都市生活者の食卓へ

今回の秋野テーブルと100本のスプーンの大きな違いは、想定する顧客と食事の場面にある。

100本のスプーンは、子ども連れの家族が利用しやすいメニューや空間を整え、ファミリー層の日常的な外食や記念日需要などに対応してきた。その立地も、二子玉川ライズやららぽーと豊洲、GREEN SPRINGSなど、住宅地や公園、文化施設と結びついた商業環境が中心となっている。

これに対し、秋野テーブルが出店する渋谷ストリームは、オフィス、ホテル、商業施設、ホールを備えた都心の複合施設だ。上層階には大規模なオフィスが入り、低層階には飲食店が集積している。平日の昼食や仕事帰りの食事に加え、来街者のカフェ利用、週末の会食など、時間帯によって異なる需要が発生する。

秋野テーブルは、この多様な需要に対して、一つの店舗で対応しようとしている。

昼にはしっかりとした食事を提供し、午後には甘味や飲み物で休憩できる場所となり、夜には料理と酒を楽しむレストランへと役割を変える。メニューも季節や仕入れによって変化させる方針で、Soup Stock Tokyoで培った全国の生産者とのネットワークを活用する。

特に興味深いのは、客席をカウンター中心に構成している点だ。一般的なレストランでは、複数人での利用を前提にテーブル席を配置することが多い。一方、秋野テーブルは席ごとに高さや椅子の形を変え、一人で静かに過ごす時間と、隣り合う人との会話が生まれる時間の両方を受け入れようとしている。

一人客が気兼ねなく利用できるというSoup Stock Tokyoの特徴を残しながら、食事の時間や滞在の仕方を広げる設計といえる。

飲食店が集積する渋谷ストリームでの差別化

渋谷ストリームは2018年に開業した複合施設で、商業ゾーンには約30区画を設けている。飲食店の比重が高く、和食、洋食、エスニック、カフェ、酒場など幅広い業態が集まっている。

秋野テーブルが出店する2階にも、蕎麦と酒を提供する「酢重 Indigo」、カフェの「DEAN & DELUCA CAFE」、イタリアンバールの「Petalo」、和食の「恵比寿 土鍋炊ごはん なかよし」などが営業している。ランチから夜の飲食まで、既存店との競合は避けられない。

その中で秋野テーブルが打ち出すのは、旬の素材を生かした料理と、利用者が自分の時間を過ごせる空間だ。

短時間のランチを求める利用者にとっては、すでに多くの選択肢がある。夜の飲酒需要についても、専門性を持った店舗が集まっている。秋野テーブルがこれらの店舗と異なる存在になるには、昼食と夕食の間にある午後の時間や、一人で少し良い食事を楽しみたい需要をどれだけ取り込めるかが重要になるだろう。

また、渋谷ストリームのオフィス勤務者にとって、毎日のランチは価格や提供時間が重視されやすい。一方、仕事の合間の休憩や、終業後に一人で食事をする場面では、料理の品質や居心地も選択の理由となる。秋野テーブルの価格設定やメニュー構成は現時点で詳細が明らかになっていないが、こうした複数の利用場面にどのように対応するかが、店舗の定着を左右すると考えられる。

レストラン事業の次の展開を占う新業態

スープストックトーキョーは、スープという商品を核に多店舗展開を進める一方、100本のスプーンではファミリー層の食事需要を、二階のサンドイッチでは美術館という文化施設の飲食需要を取り込んできた。いずれも、商品そのものに加え、立地や利用者の過ごし方を重視した業態開発といえる。

秋野テーブルでは、そこに都市生活者の一日を通じた食事需要が加わる。

ただし、オールデイダイニングには、時間帯ごとの客数変動や、料理の提供に必要な人員配置、食材管理など、スープ専門店とは異なる運営上の課題がある。営業時間を長くするだけで収益性が高まるわけではなく、ランチとディナーの間の時間帯にどれだけ利用を生み出せるかも重要だ。

また、カウンター中心の設計は一人客の利用を促す一方、複数人での会食や長時間滞在との両立が求められる。席の構成と料理の価格、サービスの内容を組み合わせ、幅広い需要を受け入れられるかが問われる。

今回の新業態が軌道に乗れば、オフィスを中心とした都心型複合施設への展開も考えられる。ただし、現時点で多店舗化の計画は発表されていない。

Soup Stock Tokyoが日常の一人の食事を、100本のスプーンが家族で囲む食卓を育ててきたとすれば、秋野テーブルは都市生活者がその日の気分に合わせて使い分けられる食卓を目指す店といえる。

12月1日に開業する渋谷ストリームの新店は、スープストックトーキョーが持つレストラン運営力を、都市型のオールデイダイニングとしてどこまで展開できるかを試す場となる。以下、同社のプレスリリースから画像と店舗概要を引用。

店舗概要】

  • 店舗名: 秋野テーブル
  • 住所:東京都渋谷区渋谷3-21-3 渋谷ストリーム内
  • オープン予定日: 2026年12月1日(火)
  • 営業時間:11:00~23:00(料理L.O.22:00 、ドリンクL.O.22:30)
  • 定休日:渋谷ストリーム定休日に準ずる
  • 電話番号:03-6427-6055
  • ご予約について:
    • 受付開始:2026年11月4日(水)より(ランチ・ディナーともに受付)

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