JR平塚駅直結の「ラスカ平塚」が、2026年11月に4店舗を新規・リニューアルオープンする。3階には「リンツ ショコラ ブティック」が11月6日にラスカ初出店し、「イッツデモ」が11月20日に移転リニューアル。5階レストランフロアには湘南エリア初出店となる「ローカルインディア」が11月18日に加わり、平塚で57年営業してきた「らーめん石狩」も11月3日にリニューアルする。

今回の4店舗は、それぞれ性格が異なる。

最も知名度の高い新店が、スイス発のプレミアムチョコレートブランド「リンツ ショコラ ブティック」だ。1845年創業で、店頭では主力商品の「リンドール」を好みの種類と量で選べる「PICK&MIX」のほか、ギフト向け商品やシェアパックなどを展開する。日常的な菓子需要だけでなく、自家需要より一段上の買い物や手土産、季節ギフトまで取れる店舗で、駅ビルとの親和性は高い。

同じ3階では「イッツデモ」が移転リニューアルする。「足元からHAPPYに」をコンセプトに店舗空間を刷新し、ファッション、コスメ、雑貨を扱う。通勤や外出途中に立ち寄る利用を想定しており、目的来店というより、駅利用の途中で発生する買い回り需要を取り込む店舗だ。

5階では、飲食の選択肢が更新される。

新たに出店する「ローカルインディア」は、恵比寿で23年営業するインド料理店。今回が湘南エリア初出店となる。本場のスパイスを使いながら日本人にも食べやすく調整したカレーを提供し、辛さは10段階から選択可能。ほんのり甘く、サクッとした食感を特徴とするクリスピーナンは終日おかわり無料としている。子どもでも食べられる甘口にも対応し、駅ビルのレストランフロアとしてファミリーから単身客まで幅広く使える業態となる。

一方、「らーめん石狩」は新規ブランドへの入れ替えではない。

創業57年、長く平塚で営業してきた店舗を残しながら刷新する。店内を明るく開放的にし、ひとりでも利用しやすいようカウンター席を拡充。麺とスープは素材や製法を見直す一方、創業以来の人気メニュー「味噌ラーメン」は従来の味を維持する。新しい店を呼ぶだけでなく、地元で定着している店を更新して残す点は、今回の改装を考えるうえで重要だ。

ラスカ平塚は1973年開業。地下1階、地上6階、延床面積約3万2518㎡、141店舗を持つ。決して小さな駅ビルではない。しかし、その商圏を見ると置かれた環境は厳しい。

平塚市内には、約250店舗を擁するららぽーと湘南平塚がある。さらに北側の自動車商圏にはTHE OUTLETS SHONAN HIRATSUKAが立地する。車で買い物に出る層を考えれば、ラスカ平塚は市内だけでも強い競合を抱える。

鉄道商圏も簡単ではない。

東海道線を東へ進めば、隣の茅ケ崎駅にはラスカ茅ヶ崎がある。同じラスカでも店舗構成は厚く、食品、生活雑貨、ファッション、書籍、飲食まで駅直結で完結しやすい。その先の辻堂にはテラスモール湘南があり、駅前そのものを広域型商業拠点に変えている。

西側も、大磯、二宮、国府津を越えると小田原商圏へ入り、ダイナシティなどが存在する。北側の伊勢原、秦野、本厚木方面まで広げても、自動車利用者はららぽーとやTHE OUTLETSなどとの競合になる。

平塚は湘南と西湘を結ぶ位置にありながら、ラスカ平塚が独占できる広域商圏は意外に狭い。

ただし、「商圏が狭い」ことと「市場が弱い」ことは同じではない。

平塚市の2026年9月1日時点の推計人口は25万7,325人、世帯数は12万496世帯。人口規模は25万人を超えて維持されており、駅周辺ではここ数年マンション供給も続いている。平塚市長も2026年の会見で、市外から若い世代が駅周辺へ移り住む事例に言及している。

JR平塚駅の2024年度1日平均乗車人員も5万6,670人で、辻堂駅の5万6,371人とほぼ同水準にある。駅そのものの利用規模が小さいわけでもない。

つまりラスカ平塚が持つのは、「広くはないが、足元に厚みのある商圏」だ。

今回の4店舗は、その市場を取り込む構成として見ると理解しやすい。

リンツは、駅で手土産や少し上質な菓子を買える理由になる。イッツデモは日常的な雑貨やコスメ需要を受け止める。ローカルインディアは、わざわざ大型SCまで行かなくても駅で外食できる選択肢を増やす。そして、らーめん石狩は平塚で長く支持されてきた需要を残す。

どれも、遠方から大量の客を呼ぶ大型集客装置ではない。

しかしラスカ平塚に必要なのは、必ずしもテラスモール湘南やららぽーと湘南平塚と同じ土俵で戦うことではない。平塚駅を日常的に使う人、駅周辺に増える居住者、平塚市内の生活者に対して、「茅ケ崎や辻堂まで行かなくてもいい」「車で大型SCへ向かわなくてもいい」と思わせる理由を積み上げることの方が重要になる。

その意味で今回の改装は、ラスカ平塚の弱点と可能性の両方を映している。

広域商圏では四方に強い競合を抱える。一方で人口25万人超の都市を足元に持ち、駅周辺には住宅が増え、駅利用者も一定規模を維持している。

商圏は狭い。しかし、その中身は弱くない。

今回の4店舗は、その「狭いが厚い市場」を確実に取り込むための補強といえる。ただし、今後も平均的な駅ビルの更新を続けるだけでは、茅ケ崎や辻堂、市内の大型SCの中で存在感を失う可能性は残る。

ラスカ平塚に次に求められるのは、便利さの積み重ねに加えて、「平塚駅だからここへ来る」という独自性をどこまでつくれるかだろう。以下、株式会社JR横浜湘南シティクリエイトのプレスリリースから画像と施設概要を引用。

【ラスカ平塚施設概要】(2026年10月1日現在)

  所 在 地   神奈川県平塚市宝町1番1号(JR東海道線・平塚駅直結)

  階   層   地下1階、地上6階

  延床面積   約32,518㎡(施設全体)

  施 設 名   ラスカ平塚

  開 業 日   1973年6月26日

  店 舗 数   141店舗

  運営会社   株式会社JR横浜湘南シティクリエイト  https://www.jryscc.co.jp/

  営業時間   10時~20時(物販)・ 11時~21時(飲食)

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