MUSASHI JAPANが大阪難波に出店、和包丁を訪日客向けに再編集する観光地型リテールを拡大
TAIMATSU株式会社は、和包丁ブランド「MUSASHI JAPAN」の新店舗「MUSASHI JAPAN 大阪難波戎橋店」を大阪・難波にオープンした。出店地は、戎橋筋商店街と法善寺表参道が交わる一角で、道頓堀やなんば駅周辺からの回遊も見込める大阪ミナミの中心部にあたる。リリースでは、同店を「大阪観光の記憶に残る体験」と位置づけており、単なる包丁販売ではなく、訪日客が日本の職人文化に触れる接点として打ち出している。
MUSASHI JAPANは、和包丁を中心に日本のものづくりを海外客へ届けるブランドとして展開してきた。TAIMATSU公式サイトでは、2020年に和包丁ブランドを立ち上げ、海外輸出を開始したこと、日本語・英語版の公式オンラインストアを開設し、カナダ、英国、イタリア、フランスへ販路を広げてきたことが説明されている。現在は実店舗を含む販売網の拡大に加え、妖怪をテーマにした日本酒バーや、書道・包丁研ぎなどの文化体験事業も展開している。
この出店で注目すべき点は、日本の伝統工芸を、海外出身の経営陣が訪日客向けの店舗体験として再編集していることにある。TAIMATSU公式サイトによると、代表取締役CEOの王威漢氏は台湾出身で、2010年に来日し、浅草を拠点にインバウンド事業に携わってきた人物である。取締役CPOの唐澤天氏は中国出身とされる。つまり、同社は日本文化を内側から守るだけでなく、外から見た日本の魅力を商品化し、観光地の購買導線に落とし込む事業者といえる。
店舗展開もその性格をよく示している。公式店舗ページでは、MUSASHI JAPANの店舗は東京、京都、奈良、大阪、広島、長崎、石川、パリなどに広がっていることが確認できる。京都清水店のリリースでは、同店を「京都では4店舗目」とし、清水寺近くの二年坂と産寧坂の交差点付近に位置する店舗として紹介している。渋谷センター街店のリリースでは、MUSASHI JAPANを「インバウンド向け事業」と明記しており、多店舗展開と海外進出を視野に入れた出店であることも示されている。
大阪難波戎橋店は、この観光地型出店の大阪版と見るべきだろう。浅草や京都清水が歴史・寺社・街歩きと結びつく立地であるのに対し、難波・道頓堀周辺は食、買物、エンターテインメントが重なる都市型観光地である。そこに和包丁を配置することで、MUSASHI JAPANは「料理道具」を「日本の食文化を持ち帰る商品」へと転換している。食べ歩きや飲食体験で終わりがちな大阪観光に、職人技を購入する選択肢を差し込んでいる点が、この出店の意味である。
和包丁は、訪日客向け商材として相性がよい。食品土産のように消費されるものではなく、帰国後も使い続けられる実用品でありながら、日本らしさや職人性を語りやすい。さらに、単価を取りやすく、店頭での説明や試用体験によって購買価値を高められる。広島本通店の紹介でも、MUSASHI JAPANは実際に包丁を手に取り、試すことができる体験型の包丁専門店とされている。
大阪難波戎橋店の出店は、和包丁専門店の新店というだけではない。外国出身の経営陣が、日本の包丁文化を訪日客に伝わる形へ翻訳し、浅草、京都、奈良、渋谷などの観光導線に店舗化してきた流れの中にある。今回の難波出店は、大阪ミナミの強い人流と食文化を背景に、和包丁を「買う土産」から「体験して選ぶ日本文化」へ押し上げる動きといえる。観光地の物販が、単なる記念品販売から文化体験型の高付加価値リテールへ移っていることを示す一例だ。以下、同社のプレスリリースから画像を引用。
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