実店舗への警鐘
我々は数十年にわたり商業施設におけるテナント(店舗)開発の仕事を請けおってきた。
店舗を誘致することで、商業開発ビジネスの一端を担うのはもとより、ユーザーに喜んでいただける店舗は何処か?商圏を調査したうえで試行錯誤しながらも大義をもって出店依頼の交渉に行ったものだ。オープン当日は、どの業種でも多くのお客様が開店を楽しみに長蛇の列をつくっていた。それを見るとやっとの思いで創り上げたという苦労が報われる感極まる一瞬であった。
だが、時流の中でインターネットが普及しそれに応じた流通システムの進化、今日頼めば明日届くECサイト・オンラインショップなどに押され、ましてや、「コロナ禍」一色に覆われた未曽有の昨今、実店舗の有り様も役割も変えていかなければならないのは店舗経営者を筆頭に現場スタッフもわかりきっている事であると思う。
しかし火の消えたようなまさしく灯が消えている店内、やる気のない販売スタッフ、大雑把な商品陳列、こういう店舗が増えているように思うのは私だけだろうか。このままでは実店舗はただ商品が置いてある場所、倉庫になりかねないのである。そんな実店舗に私なりの警鐘を鳴らすことで実店舗はやはり無くてはならないものに進化させなければと気が付いてもらわないと私どものテナント(店舗)開発の仕事も危ないのである。
警鐘その①よく解らないお包み物有料化
言うまでもない愚策、袋有料化である。ここでは政策的な事をつらつら言うことはしない。
コンビニのレジ袋有料化はまだわかったにしろ、アパレルショップとか百貨店の紙袋も有料が多い。
先日、ロードサイドの某スポーツ用品店でいわゆるジャージの上下を買った。デンマークのスポーツブランドでそれなりの価格である。レジに持っていくと「袋ご入用ですか?」へ?と思っていると間髪入れずに「袋有料なんです」ふとみると壁にコンビニのレジ袋大みたいな袋が3円と書いてあった。
どうせ有料ならと思い紙袋ありますかと聞くと「ありません」えぇじゃいいですというと「シール貼っときますね、ありがとうございました」とタグにシールを張ってジャージ上下をそのまま渡されたのである。
物売りとしてどうなのかが問題だ。そもそも、袋(包むという行為)とは数ある中から当店で販売している商品を選んで購入して頂いた感謝の証であり、またはその袋を持ち歩いて頂くことによっての看板効果(販促)につながるツールなのである。少なくとも私は若いころそう教わってお客様に対応していたし、店の袋を制作する場合、デザインや大きさ、持ち手の感触などをかなり気にしたものだ。
こんなことならネットで買えばよかった、包装が丁寧で中にはデザインされた紙袋を入れてあるネットショップもある。便利で対応が良くて買った満足感もネットショップの方が上となったら誰も実店舗で嫌な思いして買わないよ。実店舗だからこそ感動体験を包装紙ひとつとってもできるはずなのです。ネットショップに勝てるポイントをやすやすと自ら譲りに行くような営業判断・経営判断はいかがなものかと思うのです。ちゃんとひとつひとつ丁寧にお客様に向き合った対応が今まさに求められているのではないでしょうか?
商業施設.com株式会社 代表取締役社長 樋口博明