三井不動産×東京ドーム×Y&N Brothers、商業施設に専用劇場を設けた新エンタメ事業始動──秋元康プロデュースで男性グループを創出
三井不動産、東京ドーム、Y&N Brothersの三社が手を組み、東京都内の商業施設に専用劇場を設けるかたちで新たなエンターテインメント事業に乗り出す。総合プロデューサーに秋元康氏を迎え、男性アーティストグループのオーディションを2025年夏より開始し、定期公演を基軸とした長期的な育成・マネジメントを展開していくというものだ。
今回の取り組みでは、約300人規模の専用劇場を三井不動産が運営する都内商業施設に新設し、年間を通じた公演とイベント実施を計画。劇場常設型のグループ育成は、日本のアイドルビジネスにおいてAKB48劇場に代表される方式であり、秋元氏自身が長年培ってきたモデルである。このノウハウを都市型商業施設に本格導入するのは初の試みであり、物販を超えた体験価値提供を目指す商業施設戦略とも合致する。
三井不動産は、東京ドームをグループに迎えて以降、LaLa arena TOKYO-BAYのような大規模ライブ施設を含む街づくりを推進しており、「リアル体験価値の最大化」を掲げて新たな都市開発戦略を描いている。Y&N Brothersは、映像・舞台・音楽・CMなど幅広い領域でコンテンツ制作を担っており、三社の機能と強みを統合した立体的なアーティスト開発体制が期待される。
日本のアイドル市場は、アニメを含む推し活領域を含めれば1兆円を超えるとの推計もある一方で、その多くは国内需要に留まっている。対照的に韓国のK-POPは小さな国内市場からグローバルに輸出を展開し、海外収益が全体の半分以上を占める構造へと発展してきた。日本発のアイドルモデルが、商業施設を基点とした「定期接点型のリアル空間」を持つことで、世界に向けた再成長を果たせるかが今後の焦点となる。
加えて、三井不動産はマレーシア・台湾・中国などアジア各地で都市型モール「ららぽーと」やアウトレット施設を展開しており、特にクアラルンプールのLaLaport BBCCにはライブハウス「Zepp Kuala Lumpur」も併設されている。こうした既存設備や都市立地は、今回の劇場型モデルをアジア各地へと横展開するための土台となり得る。現地のアイドル文化やファン基盤との融合、運営体制のローカライズなどが今後の鍵となるだろう。
国内外の商業施設において「人が集まる仕掛け」は物販にとどまらず、エンターテインメントが担う領域を拡大しつつある。今回の取り組みは、商業施設が“集客装置”として機能する一歩先のモデルを示す事例として注目される。以下、三井不動産株式会社のプレスリリースから画像を引用。