「TOKYO SHOES RETAILING CENTER」カインズ八日市場店オープン ロードサイド展開の老舗が再構築進める業態刷新の一環
株式会社チヨダが展開する靴専門店「TOKYO SHOES RETAILING CENTER」が、2025年6月27日、千葉県匝瑳市のカインズ八日市場に新たにオープンした。これは、6月8日に閉店した「東京靴流通センター 八日市場店」のリニューアル出店にあたるもので、同社の中でも象徴的な業態転換の一例と位置付けられる。
今回の出店場所であるカインズ八日市場は、生活圏に根ざした郊外型ホームセンターとして地域住民の来訪頻度が高く、車でのアクセス性にも優れる立地である。店舗の主なターゲットは、近隣に居住するファミリー層や中高年層であり、スニーカーやビジネスシューズ、子ども靴に至るまで幅広いラインナップを揃えていることが特徴だ。
リニューアル後の店舗名に冠された「TOKYO SHOES RETAILING CENTER」は、チヨダがかつて郊外幹線道路沿いに展開し、日本の靴流通に革新をもたらした「東京靴流通センター」の系譜を引き継ぐ業態である。1978年の第1号店出店以来、ロードサイド型店舗の先駆けとして確固たる地位を築いた同ブランドは、「セルフ型店舗」「低価格路線」「大量陳列」といったスーパーマーケット型の販売スタイルを導入し、当時の小売業界に新風を吹き込んだ。とりわけ、靴という比較的接客を要する商材でこれを実現した点は、専門店流通の進化においても注目されるべき事例であった。
時代の変化とともに、チヨダは単なる商品販売から「選ぶ楽しさ」や「履き心地の体験」へと店舗価値をシフトしており、今回の新店舗でもその方針が反映されている。たとえば、立ったまま手を使わずに履けることで人気の「スパットシューズ」シリーズは、機能性とデザイン性の両立が図られており、靴選びをサポートする専門スタッフによる接客も導入されている。こうした“脱ロードサイド量販”型のサービス強化は、郊外商圏においても顧客の定着や再来店に直結する要素として重要視されている。
また、公式アプリ「kutsu.com」の導入によるポイント還元や会員限定サービスも強化されており、デジタル施策を絡めた販売戦略にも注目が集まる。今回の出店では、アプリ会員向けキャンペーンやノベルティ配布などの来店促進策が展開され、従来の“通りがかり型”の買い物スタイルから、目的来店を促す新しい顧客導線が模索されている。
なお、株式会社チヨダは1936年の創業以来、靴小売を主力事業とし、全国で873店舗(2025年2月末現在)を展開する業界最大級の企業である。1948年の法人化以降、「東京靴流通センター」「シュープラザ」「SPC」など多彩な業態を展開し、2002年には東証一部(現・プライム市場)に上場。靴小売業におけるロードサイドチェーンの礎を築いた先駆者として、現在も業態改革と商品開発の両面から競争力を維持している。
本件は、そうした同社の歴史と現在の再構築が交錯する象徴的な出店であり、郊外商業施設における靴専門業態の再定義を示す動きとして注目される。今後も「TOKYO SHOES RETAILING CENTER」を軸としたブランド戦略の展開が進む中で、チヨダの動向は地方商業地における専門店モデルのヒントとして、商業施設関係者にとっても見逃せないトピックとなりそうだ。以下、株式会社チヨダのプレスリリースから画像と店舗概要を引用。
店舗名 TOKYO SHOES RETAILING CENTER カインズ八日市場店
住所 千葉県匝瑳市八日市場口字横田118 カインズ八日市場1F
電話番号 0479-85-7755
営業時間 9:30~20:00
オープン日 2025年6月27日(金)