CSRとファッション
CSRといわれる幻想はこの20年日本のあらゆる産業であらゆる企業を毎年のように揺れ動く葦のようにさせつづけてきました。近年ではSDGsというキーワードがCSRを揺れ動かしています。CSRが揺れ動く理由としては定まったルールが無いということが理由になります。いや、ルールはあるんですが複数ルールが存在しておりどこに照準を合わせるべきなのか常にわからなくなってしまうからです。昨今の新しいトピックスは欧州議会とEU理事会が2022年6月に企業サステナビリティ報告指令を暫定合意に達し、非財務情報開示指令適用企業は2024年1月から、大規模企業は2025年1月から法的拘束力のある企業サステナビリティ報告指令が適用されることになったこと。これにより日本企業もEU現地法人がある場合は適用され報告を行わなければならなくなるというもの。
また新たなルールが生まれ、そのルールに左右されることになります。これで一儲けできるのは監査法人やコンサルティングファーム。本質的な活動よりも報告の方が重視される現在の状況は本質的なサステイナブルな行動からどんどん遠ざかっていくことになるのではないかと危惧しています。しかし、日本では環境省が非常に地道で確実なサステイナブル活動を支えています。その一つがサプライチェーンの脱炭素化推進。これは商品開発から販売、廃棄までの商品のライフサイクルの中で排出される温室効果ガス排出量の総量を低下させようというもの。それぞれの事業活動をフェーズわけし、スコープ1から3までに区分し、それぞれのスコープの中活動を数値化して把握、削減していこうという活動をおこなっています。
その「環境省 令和4年度サプライチェーンの脱炭素化推進モデル事業」に株式会社 ワールドが選定され、サプライヤーと共にGHG(温室効果ガス)削減に向けたサステナブル素材の共同開発を行い、従来の素材と比較をしたGHG排出量の削減率を明確化。同素材の使用を含む環境負荷を考慮した素材は、2023年秋冬から「CIRCRIC(サーキュリック)」という素材ブランドとして、ワールドグループでの使用に加えOEM、ODMを通して業界内を横断して拡大するとのこと。ちなみに2023年秋に向けて新素材を開発し、ウールの端材から再生ウールを作り出たり、リサイクルペットとオーガニックコットンかけあわせた素材などを開発している。
今回の株式会社ワールドの活動は評価されるべき活動で、目先の報告の云々ではなく本来の事業自体のサステイナブル化というのはすべての企業に求められている活動。この活動で大切なのは消費者が理解し、賛同してくれること。消費者がとはいえどもダウンの方が温かいからと言ってしまったらその時点でこの高邁な精神で進められているアクションが水泡に帰すことになっていく。この活動については店頭でも店員ひとりひとりが丁寧に顧客に説明できるくらい知識伝達し、しっかりと教育してすすめていっていただきたいと思う。それを経てやっと業界のリーダーとしてグリーンファッション企業としてリーディングしていくことができるのではないだろうか?
以下、株式会社ワールドのプレスリリースから新素材についての内容と画像を引用。
ワールドグループとして環境貢献数値を明確にしたサステナブル素材ブランドを開発
今回の新素材を含め、今後ワールドグループがサステナブル原料(再生、リサイクル原料)、作り場(グリーンファクトリーなど)を活用して生産した素材および製品には、2023年秋冬から「CIRCRIC(サーキュリック)」というブランドネームを使用します。今回開発をした2種の素材を含む「CIRCRIC」の使用により、これまで定義が定めにくかったサステナブル製品において環境貢献数値を明確にすることが可能になります。今回開発をした、2023年秋に向けて使用するサステナブル原料について
■「再生ウール」
GHGを33.7%削減 ※
※ウール原料(紡績、織布、加工)の製造工程における対バージン比のGHG削減率
共同開発企業:中伝毛織株式会社(愛知県一宮市)
紡績段階での落ち綿とウール混率90%以上のニット商品、ウールの裁断端材等からアップサイクルした「再生ウール」をベースにコート、ジャケット、ボトム用の素材を開発。資源を再利用することで羊の飼育にかかわるGHG排出を削減した。■「再生ポリエステル×オーガニックコットン」
GHGを23.4%削減 ※
※ポリエステル、コットン原料(紡績、織布、加工)の製造工程における対バージン比のGHG削減率
共同開発企業:豊島株式会社(愛知県名古屋市)
ペットボトルから再生した「リサイクルポリステル」とトレーサビリティ可能な「オーガニックコットン」を混紡した汎用性の高いシャツ素材を開発。どちらもバージン原料(従来の製造方法による原料)と比較して大幅なGHG排出量削減を実現。