牛角焼肉食堂の拡大が示す、牛角ブランド出店戦略の重心変化
コロワイドグループの株式会社レインズインターナショナルが展開する「牛角焼肉食堂」が、2025年12月29日にイオンモール与野へ出店し、国内80店舗目に到達する。あわせて2025年単年で30店舗を新規出店する計画が示され、同社の出店戦略における重心がどこに置かれているかを端的に示す事例となった。
牛角ブランド全体を俯瞰すると、依然として店舗数の大半は従来型の焼肉専門店で占められている。ロードサイドや駅前、商業施設内の専門店区画で展開される通常の牛角は、国内で数百店舗規模を維持しており、ブランドの基幹を成す存在である。ただし、近年の動きを見ると、通常出店については新規開業のニュースは限定的で、リニューアルやメニュー施策、既存店の活性化を主軸とした情報発信が中心となっている。出店数の純増を狙うフェーズというよりも、成熟ブランドとしての安定運営と再設計の段階にあると整理できる。
これに対し、牛角焼肉食堂は明確に拡張フェーズに位置づけられている。フードコート専業モデルとして展開される同業態は、イオンモールをはじめとする大型ショッピングセンターへの出店を軸に、月次単位で複数店舗の開業を重ねてきた。今回の「80店舗達成」「年間30店舗出店」という表現自体が、成長スピードをニュース価値として前面に出している点も象徴的である。
この差は、単なる業態違いではなく、新規出店における投資効率と再現性の違いに起因する。通常の焼肉店は設備負担や人員体制が重く、夜需要への依存度も高い。一方、フードコート型は商業施設の集客を前提とし、昼夜を問わず回転需要を取り込めるため、小型区画での標準化が可能となる。結果として、現在の新規出店の比率は、通常の牛角よりも牛角焼肉食堂に大きく傾いている。
重要なのは、牛角ブランドがフードコートへ全面的に移行しているわけではない点である。全体の店舗数では通常出店が依然として主流であり、牛角焼肉食堂はその中で「増やす役割」を担う存在である。守りの通常業態と、攻めのフードコート業態という二層構造が明確になりつつあるといえる。
イオンモール与野への出店は、その戦略を裏付ける一例である。牛角焼肉食堂の拡大は、フードコートの専門店化が進む現在の商業施設環境において、焼肉というカテゴリーを日常利用へ引き寄せる試みであり、今後のSCフードコートMDを読み解く上でも注目すべき動きである。以下、株式会社レインズインターナショナルのプレスリリースから画像と店舗概要を引用。
【新店情報】牛角焼肉食堂 イオンモール与野店
・住所 :埼玉県さいたま市中央区本町西5丁目2-9 イオンモール与野
・電話番号:048-755-9929
・営業時間:10時~21時
※ラストオーダーは閉店時間の30分前 ※年末年始の営業は施設に準じます







