長寿社会の商業施設に関する考察
殆どの人は、自分で思っているよりも、恐ろしいほどの速さで年を重ね、身体の衰えにこんなはずじゃなかったと思う日が必ず訪れる。自分を顧みても、高齢者の括りに仲間入りするつもりは微塵もなかったが、ついに時は来た。来たものは仕方がないので、自分目線で同世代が楽しめる施設を探してみた。
そもそも、これから増える高齢者は、高度成長時代に溢れ出た情報から、学びや仕事や遊びの経験を蓄積した人生の熟練者達であり、戦時中のような悲惨な状況こそ無かったが、天災、人災、経済破綻や人間不信になるような事件と遭遇しながらも、競争社会を生き抜いてきた物凄いエネルギーの持ち主ばかりなのである。そんな人々を満足させるキーワードは、一言でいうと格好いいかどうかなのだと私は思っている。
しかし、そんな施設は一部のセレブの高齢者施設以外見当たらない。
百貨店さえも、本来の使命を放棄し、安さと機能を売りにした大量生産品の買い場か、もしくは極端にインバウンドを意識した外国人受けの商品や土産物売り場ばかりである。この先も必ず存在する高齢者が一番の経済力を持つ世代にもかかわらず、商業空間のほんの片隅に、寂しく色気のない売り場やサービス機能がついているようにしか見えない。なので、益々ネット販売や通販に流れてしまうのだ。近隣に買い物できる場も時間もあるというのに買えるものがないとはおかしな話だ。超高齢者でも、例え、介護が必要な状態になっても、おしゃれな人がいいに決まっている。
知人に70代を迎えた半身マヒのご隠居さんがいるが、特注のおしゃれな車いすを駆使して世界中を旅行されている。片手でPCを使いこなし、SNSの全てを自由に操られて新たに得た知識や教訓を情報発信されている。もちろんファッションセンスはいう事ない。
グルメで研究熱心なので、高級レストランからはやりのB級グルメやファストフードまで気になるところは網羅しているし、定期的に後輩の仕事の相談に乗ったり、起業家の応援もしている。こういう方をイメージして構想を練って欲しいものだ。これからの高齢者は殆どがネットを使いこなし技術の進歩に敏感で、かつそれぞれの特技を持ち個性的である。
20代はファッション雑誌を片手に流行と共に生き、海外旅行を頻繁にし、音楽やスポーツも新しいジャンルを貪欲に取り入れてきた新規事業開発世代である事をもっと意識して欲しいと思う。そんな中、大手のモール内で、デイサービス企業が誘致されて徐々に増えているようだ。ディサービスと言っても介護事業である以上、様々な制約や施設の中ということで他の店舗との整合性等、難易度の高い構想であったはずだが、実行に移されたことに敬意を表したいし、これからの商業施設の在り方に新たな広がりを与えてくれたと感心している。
始まりは、モール内誘致でも、なんだか、あのモールは、カッコいいジジババがお茶を飲んで散歩しているとか、あそこのディサービスに来る人はおしゃれなウエアを着ているとかといわれるようなモールになってくれる事を期待している。
そういえば、最近同じように不自由になられたおしゃれ上手な奥様が補助機器の色が悪いと不満爆発で、こんな色の物は履きたくない!!と大変ご立腹だったようだ。
ほら、やっぱり。