百貨店が「場貸し」へ舵を切る——京急百貨店、リーシングDXで催事運営を再定義
百貨店業態で初、SC型システム導入の意味
京急百貨店が商業施設向けリーシングDXシステム「ショップカウンター エンタープライズ」を導入した。百貨店業態では初の導入となる。対象は京急百貨店本体と、SC業態のウィング3施設(新橋・高輪・久里浜)。従来Excel中心で属人化していた催事管理を一元化し、専用募集サイトを通じて多様な事業者との接点を広げる。
表面的には「業務効率化」だが、本質は百貨店の構造転換だ。百貨店はこれまで、バイヤーが商品を選び、編集し、仕入れる「編集者モデル」で成立してきた。対してSCは、テナントを誘致し、場を提供する「プラットフォームモデル」。京急百貨店は今回、SC型システムを導入することで、百貨店でありながら「場を貸す側」への部分転換を始めた。
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「誰を選ぶか」から「誰が来るか」へ
リリースには「従来の人的ネットワークだけでは出会いにくかった多様なカテゴリの事業者との接点を広げる」とある。これは裏を返せば、百貨店の既存ネットワークだけでは催事の鮮度が保てなくなっている証左だ。
百貨店の催事は伝統的に、バイヤーや担当者が「選んだ」事業者を招く形で成立してきた。だが、消費の多様化と販路の分散により、百貨店が「選ぶ側」として網羅できる範囲は限定的になった。システム導入により、百貨店は「誰を選ぶか」ではなく「誰が手を挙げてくるか」にシフトする。プッシュ型からプル型への転換だ。
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共用部の収益化が示す「余白の商品化」
もう一つ注目すべきは、エレベーター横など共用部を催事スペースとして活用する点だ。従来、百貨店の共用部は「売場と売場をつなぐ通路」であり、収益を生む場所ではなかった。だが今回、京急百貨店は共用部を「貸せる場所」として再定義した。
これは、売場面積が固定された百貨店が、既存資産の中で新たな収益源を探る動きとして理解できる。SC業態では既に一般化した手法だが、百貨店にとっては「余白の商品化」という発想の転換を伴う。
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百貨店とSCの境界が曖昧になる
京急百貨店は、百貨店業態の「京急百貨店」とSC業態の「ウィング」を併営してきた企業だ。この併営構造が、今回のシステム導入を後押ししている。ウィングで培ったテナント展開の知見を、百貨店側にも適用する流れだ。
ただし、百貨店の「編集力」とSC型の「多様性」は必ずしも両立しない。バイヤーが選んだ催事と、システム経由で集まった出店者が混在する売場が、顧客にとって一貫した体験を提供できるかは未知数だ。百貨店の「らしさ」とSCの「開放性」の間で、京急百貨店がどのようなバランスを取るかが問われる。
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他百貨店への波及可能性
カウンターワークスの「ショップカウンター エンタープライズ」は、既に1,500以上の商業施設に導入されているが、百貨店業態では京急百貨店が初だ。他百貨店が追随するかは、京急百貨店の運用実績次第だが、催事運営の属人化と管理負担は業界共通の課題であり、波及可能性は高い。
ただし、百貨店によって「編集力」への執着度は異なる。都心大手百貨店は依然としてバイヤー主導の編集モデルを堅持する可能性が高い一方、地方百貨店や駅ビル型百貨店は、京急百貨店と同様の転換を進める可能性がある。
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構造転換か、延命策か
百貨店がSC型システムを導入したことは、業態の境界が曖昧になる象徴的事例だ。ただし、これが「新しい百貨店像」の構築につながるのか、それとも「百貨店モデルの延命策」に過ぎないのかは、まだ見えない。
京急百貨店が今後、システム経由で集まる事業者と既存のバイヤー編集をどう統合するか、共用部の催事がどの程度の収益を生むか、そしてウィングとの役割分担をどう再定義するか。この3点が、百貨店のSC化が成立するかを決める。
百貨店が「編集する主体」であり続けるのか、それとも「場を提供する側」へ移行するのか。京急百貨店の実験は、業界全体の分岐点となる可能性を秘めている。以下、株式会社カウンターワークスのプレスリリースから画像を引用。
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