三陽商会、アッパーミドル層向け婦人服ブランドの複合型ショップ「SANYO Style STORE」都内初出店—OMO強化で百貨店市場に対応
三陽商会は、複数の婦人服ブランドを集約したコンセプトショップ「SANYO Style STORE(サンヨー・スタイルストア)」を、2025年3月19日、大丸東京店にオープンした。本店舗は全国で9店舗目、都内では初の出店となる。アッパーミドル層をターゲットとする婦人服市場において、百貨店の売場縮小や消費行動の変化に対応しつつ、OMO(Online Merges with Offline)を活用した販売戦略を加速させる狙いがある。
百貨店市場の変化と「SANYO Style STORE」の戦略
近年、都市部の百貨店ではラグジュアリーブランドの誘致が進み、それに伴い婦人服売場の縮小が顕著になっている。特に、アッパーミドル層向けのファッションブランドにとっては売場確保が課題となり、単独ブランドの店舗運営では多様な消費者ニーズに対応しにくくなっている。こうした背景を受け、三陽商会は2023年から複合型ショップ「SANYO Style STORE」を展開し、異なるブランドの商品を一つの売場で展開することで、顧客の購買選択肢を広げるとともに、売場効率を最大化する戦略を推進している。
今回、大丸東京店に出店した「SANYO Style STORE」では、三陽商会が展開する「AMACA(アマカ)」、「EVEX by KRIZIA(エヴェックス バイ クリツィア)」、「TO BE CHIC(トゥー ビー シック)」、「TRANS WORK(トランスワーク)」の4ブランドを展開する。ブランドの垣根を超えた商品構成を採用し、シーズンごとに主力アイテムを集約することで、顧客に新しいショッピング体験を提供する。
OMO強化による購買体験の向上
「SANYO Style STORE」では、ECと店舗の連携を強化するため、2023年から導入されている店舗試着サービス「TRY&PICK(トライ&ピック)」を活用する。本サービスでは、店舗とECの在庫を指定の店舗に取り寄せ、試着のうえ購入することが可能となる。今回オープンした大丸東京店でも、館内に取り扱いのないブランドを含む三陽商会の各種ブランドの取り寄せに対応し、消費者の選択肢を広げる。
近年の消費者行動の変化を受け、オンラインで商品を確認し、実際に試着した上で購入したいというニーズが高まっている。OMOを活用することで、ECと実店舗の在庫を統合し、限られた売場スペースでも多様な商品を提供できる仕組みを整えた。百貨店内での顧客利便性を高めるとともに、売場面積の効率的な活用にも貢献する。
三陽商会の現状と今後の展望
三陽商会は、かつて「バーバリー」のライセンス事業を主力としていたが、2015年の契約終了後、独自ブランドの開発に注力。しかし業績は低迷し、一時は経営の立て直しが急務となっていた。近年ではOMO戦略を推進し、ECと実店舗の連携を強化することで業績の回復を図っている。
また、2027年度までに「SANYO Style STORE」を全国20店舗に拡大する計画を掲げ、今後は都市部の百貨店だけでなく、地方の商業施設への展開も視野に入れている。2025年度は、阪神梅田本店、松坂屋名古屋店、天満屋福山店への出店が予定されており、出店エリアの多様化を進めている。
サステナブルな取り組みの強化
「SANYO Style STORE」では、環境配慮の観点からサステナブルな施策も積極的に導入している。店舗には「補修受付カウンター」を設置し、三陽商会の製品の補修を有料で受け付けることで、衣類の長期利用を促進。また、不要になった衣料品の回収を行い、リユース・リサイクルへとつなげる「SANYO RE: PROJECT(サンヨー・リ・プロジェクト)」を展開している。
さらに、店内で使用するハンガーにはFSC認証を受けた木材を採用し、塗装を最小限にすることで環境負荷を低減。床材には再生素材を使用するなど、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを強化している。
今後の展開と課題
「SANYO Style STORE」の展開により、三陽商会は百貨店市場におけるプレゼンスを高めるとともに、OMO戦略を活用した新たな顧客体験の提供を進めている。ECと店舗の在庫連携による販売機会の最大化、サステナブルな施策によるブランド価値の向上など、これまでの課題に対する具体的な解決策を打ち出している。
一方で、国内の百貨店市場は縮小傾向にあり、ラグジュアリーブランドの拡大に伴う売場再編が進む中、今後も売場確保が大きな課題となる。三陽商会は、百貨店だけでなく他の商業施設への展開を模索しつつ、OMOのさらなる強化を進めることで、競争力の維持・向上を図る必要がある。
まとめ
三陽商会は、アッパーミドル層向け婦人服市場において、単独ブランド展開ではなく複数ブランドを集約する「SANYO Style STORE」の展開を強化している。都内初出店となる大丸東京店では、OMOを活用した試着サービスの拡充や、サステナブルな取り組みを強化。今後の全国展開とともに、百貨店市場の変化に対応しながら新たな販売モデルを構築していくことが求められる。以下、同社のプレスリリースから画像と店舗概要を引用。
SANYO Style STORE大丸東京店 店舗概要
店舗名 SANYO Style STORE 大丸東京店(サンヨー・スタイルストア 大丸東京店 オープン日 2025年3月19日(水) 所在地 東京都千代田区丸の内1-9-1 大丸東京店6F 営業時間 午前10時 ~ 午後8時 ※施設の営業時間に準じます 展開ブランド 「AMACA(アマカ)」 「EVEX by KRIZIA(エヴェックス バイ クリツィア)」
「TO BE CHIC(トゥー ビー シック)」
「TRANS WORK(トランスワーク)」