GINZA SIX、2025年秋のリニューアルで“世界観を売る空間”へ──世界初・日本最大級の旗艦店が集結し、インバウンドを捉えるMDへ再構成
2017年の開業以来、銀座エリア最大級の商業施設としてラグジュアリーブランドのフラッグシップ機能を担ってきたGINZA SIXが、この秋大規模なリニューアルを実施する。今回の動きは、単なるテナント入れ替えにとどまらず、「Life At Its Best 最高に満たされた暮らし」という施設コンセプトを体現する、体験重視のMD構成へと踏み込んだ。世界初の業態や旗艦店の再定義など、銀座という立地特性とインバウンド需要の回復をにらんだ再編が際立つ。
注目すべきは、〈MARNI CAFE〉の誕生だ。イタリア発のファッションブランドMARNIが、同ブランドの哲学を体現する世界初のカフェ業態を展開。食のプロフェッショナルである「パティスリィ アサコ イワヤナギ」との協業により、マルニらしい創造性と遊び心が、ビジュアルと味覚の双方から来館者を包み込む。このような“空間と体験の編集”は、単に商品の購入を目的としないインバウンドや観光目的の来街者との親和性が高く、施設全体の滞留時間にも寄与する施策といえる。
さらに、2階には〈PRADA〉が銀座で初の直営店舗として登場する。ミラノの歴史あるブランドが、メンズ・レディスのフルラインナップをそろえた新店舗をこの地に構える意図は、銀座が持つ都市型ラグジュアリーの象徴性を物語る。一方で同フロアの〈GIVENCHY〉は、サラ・バートンによる新クリエイティブ体制を初めて反映した日本初のコンセプトストアとして、旗艦店としての存在感を打ち出す。こちらは2025年秋冬コレクションの初展開に合わせたリニューアルで、インバウンドだけでなく感度の高い国内顧客への発信基地としても注目される。
3階では、〈Maison Margiela〉が店舗面積を拡張して再オープン。曲線を描くトラバーチンを使用した内装により、ブランドの再構築的な哲学を空間に昇華させる。また、リニューアル記念として限定カシミアコートの展開も予定しており、「ここでしか出会えない」価値を提供する仕掛けが随所に見られる。
地下には、湘南・茅ヶ崎発のグルテンフリーパティスリー〈BONBONS DE K〉が銀座エリア初出店。35種類のフィナンシェや缶入りクッキーといったギフト需要に対応するアイテムに加え、酒肴系スイーツまで用意する同店は、内外の高感度層に支持される構成で、地下食品ゾーンの新たな核として期待される。
期間限定のポップアップ展開も含めると、〈PUCCI〉〈CAREL〉〈CASADEI〉といった欧州の老舗ブランドや、ハワイのクラフト焼酎〈KALO〉、広島発の生キャラメル専門店〈YAWAMEL〉など、カテゴリー・地域性・文化背景において多様な「語れるブランド」が一堂に会する。これらは単なる物販ではなく、“ブランド文脈”を消費する現代の高感度な購買スタイルにフィットしたMD構成であり、訪日外国人観光客にとっての“目的地”としてのGINZA SIXの機能強化を意味している。
今回のリニューアルは、従来のラグジュアリーブランドの展示・販売の場としての役割を超え、「世界観を売る空間」としてGINZA SIXを再定義するものである。各ブランドの哲学や創造性を軸としたストーリー性のある出店と、その体験を支える空間演出は、今後の都市型商業施設のMDモデルにおけるひとつの指標ともなり得るだろう。以下、GINZA SIXリテールマネジメント株式会社のプレスリリースから画像を引用。