anello®が再び心斎橋へ──小資本から世界へ拡張したブランドが示す、新拠点の意味
大阪発のバッグブランド「anello®」を展開する株式会社キャロットカンパニー(本社・大阪市中央区)は、2025年10月16日、大阪・心斎橋に直営店「anello® 心斎橋」をグランドオープンした。テラコッタ色の天井を配した温かみのある空間に、anello®および日本限定ラインのanello GRANDE®を中心とした商品をそろえる。直営店ならではの限定アイテムを多数扱い、ブランドの新しい世界観を体現する店舗として位置づけられている。
1988年創業のキャロットカンパニーは、もともとバッグや財布の企画製造を手がける中小メーカーだった。2005年に誕生した「anello®」は、性別や世代を問わないシンプルなデザインを掲げ、2010年代にヒットした“口金リュック”で一躍知名度を高めた。日常使いに適した価格と機能性の両立により、急速に支持を拡大。2015年には売上高44億円、翌年88億円、2017年には118億円規模に達し、国内バッグ市場の成長ブランドとして注目を集めた。
この成長を決定づけたのが、アジア市場での評価である。香港での人気をきっかけに東南アジアへと販路が広がり、タイ・フィリピン・シンガポールなどを中心に出店を重ねた。現在は世界35か国以上に販売ネットワークをもち、フィリピンでは50店舗を超える展開を見せる。資本金1,000万円という規模ながら、海外でのブランド確立に成功した背景には、OEM事業で培った生産・物流力と、現地パートナーとの柔軟な連携がある。無借金経営を維持しつつ、国内外の自社拠点を有機的に結んできた点が、この企業の特異性を際立たせている。
今回の心斎橋店は、そうした国際的成長を経たブランドが「原点の地」に戻って開く新しい直営モデルである。大阪ではかつてグローバル旗艦店を展開していたが、直営拠点を再編し、再び中心地・心斎橋に拠点を置くことで、国内外の顧客双方に向けた“ショールーム型ストア”としての役割を担う。観光客の多い立地特性から、海外市場との接点を可視化する店舗としても期待される。
anello®の海外人気を支えるのは、ミニマルで機能的なデザインと手に届く価格帯だ。近年では日本限定ブランド「anello GRANDE®」を立ち上げ、差別化を図る動きもみせている。今回の店舗でも、その象徴となる「motte」シリーズの新ビジュアルを打ち出し、グローバル展開の中で“日本発信”の存在感を強める姿勢を示した。
中小資本の企業が国内外で均衡の取れた成長を遂げるのは容易ではない。だが、キャロットカンパニーは効率的な経営体制のもと、ブランド価値の拡張と国内再整備を同時に進めている。心斎橋の新店舗は、グローバルブランドとして成熟しつつあるanello®が、再び大阪から世界へと発信する起点として注目される存在である。以下、プレスリリースから画像と店舗概要を引用。
店 舗 名 :anello® 心斎橋
所 在 地 :〒542-0081 大阪市中央区南船場3-4-26 THE PEAK SHINSAIBASHI 1F
営業時間 : 11:00-20:00