呉服産業の今後
変わらないことによる良さと変わることによる良さというものが世の中に常に存在しています。人口動態の変化、文化の変化、技術の進化、流行の変化などの外的な環境変化によって変わらないとついていけない業態もあれば、そんなものどこ吹く風で何も変わらない、変える必要がないと思っている、変えることが出来ない業態なんていうのも存在します。どっちが良いとか悪いとかというわけではありません。私の実家では着るものはすべて着物という名称で読んでいました。日本語ではもともと着るものは洋服だろうが、和服だろうが着るものは着物という言葉で呼ぶことができる言語でしたが、時代の流れで着物は和装を指すようになっていきました。
その和装の販売方法は明治以降徐々に今の形に固まっていきました。そもそも一般庶民は綿の着物を着ていたものを絹の着物が良いものですよ、価値がありますよ、一家の家宝にできますよという触れ込みで販売していく手法が確立していきました。振り袖なんていうのもその範疇で結婚するときに家宝を持って嫁げますよ的な言い回しで販売してきたものでした。しかし実情としては着物は反物で販売する前のものが一番高く、反物を販売すると価値は下がり、仕立てるとまた価値が下がるという不思議な業態構造になっていきました。流通構造も古く、販売したときに始めて仕入れが起きる形となっており、生産者が一番苦しく営業を強いられる仕組みが定着していきました。
その中で洋服が台頭してき、和装の売上は激減していきました。時代の流れに和装がついていかず、これまでの営業方法を変えなかったことで和服が売れなくなるスパイラルに陥っていきました。そんな中バブル期に入り、なんとか和装を身近にするために浴衣を販売し浴衣から着物に興味を持ってもらえないものかと試行錯誤する時期もありそれなり浴衣は売れました。しかし、そこに目をつけたのが大資本でイオンやイトーヨーカドーなどの量販が中国で大量生産を行い、呉服産業の売上を鮮やかに奪っていきました。ますます売るものがなくなってきた呉服産業。今後どうやって呉服産業が生き残っていくのか各社方法を模索しているのが今の状況です。
そんな中、株式会社一蔵が展開する「振袖専門店 一蔵」「きもの着方教室 いち瑠」が新横浜プリンスペペに12月22日㈭グランドオープン。振袖専門店 一蔵では、「永遠に輝く、最高の瞬間」をテーマとして他の店舗にはない限定商品を取り扱うとのこと。幅広い色柄、テイストの振袖が勢ぞろいし、圧倒的商品量を取り扱う。きもの着方教室 いち瑠では基本的な着る技術・着せ方が学べるだけではなく、きものに触れることで出てくる「きもの文化」への興味や、「着る機会がない、お手入れの方法がわからない」といったお悩みに対しても様々なおでかけイベントや講座を開催。着物を売るためには着物を知ってもらわないと売れないので各社教室を使った販売手法を1990年代ころからおこなっておりその延長線上の業態となっている。
これまでの形でどこまで新横浜という立地で戦うことができるのか?今後の呉服産業の明日を占う出店になるのではないでしょうか?注目が集まります。以下、株式会社一蔵のプレスリリースから画像と店舗概要を引用。
店舗概要
■住 所:〒222-0033 神奈川県横浜市港北区新横浜3-4 新横浜プリンスペペ 3階
■営業時間:一蔵 10:00~21:00 / いち瑠 10:30~19:00
■定 休 日:一蔵 水曜日 / いち瑠 月曜日・火曜日
■アクセス:JR横浜線(JR東日本)・横浜市営地下鉄(3番口利用)「新横浜」駅から徒歩2分