縁の可能性
日本家屋と西洋家屋の違いは自然に対する対峙方法にあると言われています。西洋の建物は石造りで外界となる自然環境に対峙する。その一方で日本家屋は自然を受け入れ、自然と共に共生する。湿度が高ければ湿度を吸収し、気温には床をあげて調整し、周りの自然を受け入れ、利用する独特な視点が存在しています。そんな日本の家で最近失われつつ有るのが(そもそも日本家屋を新築で建てる人たちは少なくなっていますが)縁側です。
縁側は外の世界と内の世界の境界となる機能があり、外の人たちと内の人たちがつながる場所、縁をつなぐ場所でもあります。(縁側の語源は厳密に言えば、建物のふち(縁)側から来ているとのことです・・・。)人が集い、語らい、過ごす場所が縁側で建物や生活の余白のようなスペースなのではないかと思います。この縁側は商業施設にも実は存在します。それが共用スペース。商業施設ではないのですが、この縁側を都市に構築して大成功した事例が東京都豊島区の南池袋公園です。
昭和26年に開園した南池袋公園は高度成長期を経て、バブルも経て、都市の憩いの場所から都会の暗がりのような場所になってしまい一時期治安が悪い場所として認識をされた時期もありましたが平成28年にリニューアルしてから、翌年の29年にはグッドデザイン賞、その翌年には日本造園学会賞を受賞している素晴らしい公園です。この公園のすばらしいところは徹底された芝生管理と芝生に面したひな壇のようなベンチ(縁側的なもの)にあります。公園なのに芝生に1年の1/3程度は入ることができないほど徹底した管理ぶりです。その一方で雨が降っていない日には常にひな壇には人が集まり時間を過ごしています。
このように共用部の緑地をうまく活用することで地域コミュニティのハブになることもできることを示したが南池袋公園。この機能をうまく商業施設に吸収したのが今回のニュースで取り上げるガーデンズ千早になるのではないかとおもいます。ガーデンズ千早は高橋株式会社が2021年4月に福岡県東区千早に開業した地域密着型複合商業施設。九州最大級の無印良品や高橋株式会社のグループ会社が運営するフィットネス施設など地域住民に愛される施設。その施設がこの4月28日に施設名称にもなっているガーデンエリアを新設。このガーデンエリアをちはや公園と命名し、オープンデッキにもカフェレストラン出店させるなどの取り組みを行う。基本設計は、まちの魅⼒や可能性を引き出す公共空間の開発に実績を持つ株式会社オープン・エーが担当したとのこと。
地域密着型商業施設に縁側のような人が集うスペースとくれば、鬼に金棒のような組み合わせ。激戦区となる福岡の商業ですが、地域住民に必要とされるガーデンズ千早の展開に注目が集まります。以下、高橋株式会社のプレスリリースより施設概要と画像を引用。
【 GARDENS CHIHAYA(ガーデンズ千早)施設概要 】
事業主 : 高橋株式会社
所在 : 福岡県福岡市東区千早3丁目6番37号
総敷地面積 : 18,082.3㎡
構造・規模 : 鉄骨造
総延床面積 : 約16,173㎡
店舗総数 : 29店舗(本館:22店舗 公園棟:7店舗)
駐車台数 : 約300台
営業時間 : 本館 10:00〜21:00 ※一部営業時間が異なる店舗があります
ちはや公園 開園時間 8:00〜22:00 ※営業時間は店舗により異なります
webサイト : https://gardenschihaya.com/