ラスカ小田原、改札直結3階を食ゾーン化 地元対応型駅ビルから観光需要も取り込む20周年リニューアルへ
JR横浜湘南シティクリエイトは、ラスカ小田原の開業20周年施策として、JR小田原駅改札直結の3階エントランスをリニューアルし、新たな食ゾーン「ODAWARA U-me Gate」を2026年6月に開くと発表した。新ゾーンは「手土産」「自家需要」「旅行土産」をキーワードに、地元店の味わいと全国的に話題のショップ、軽飲食を含む8ショップで構成する計画だ。表面上は食の強化だが、実際には駅ビルの入口の役割そのものを組み替える動きといえる。
今回のポイントは、ラスカ小田原が従来の「地元対応型の駅ビル」という色合いから、一歩踏み込むことにある。現在の3階はレディスファッション、レディスシューズ、雑貨、カフェ、食料品、書籍・文具などで構成されており、改札階でありながら日常利用の延長線上にあるフロアだった。そこをあえて土産、食、軽飲食の導入口へ改めるのは、単なる区画改装ではなく、駅で最初に見せる館の顔を変える判断だ。つまり、ラスカ小田原は20周年を機に、日常需要を支える駅ビルであり続けながら、観光客や広域来街者の需要も正面から取り込む方向へ重心を移し始めたと読める。
その背景として見逃せないのが、隣接するミナカ小田原の存在だ。ミナカ小田原は「城下町市場」や西湘フードスタジアムなど、土産、地域食、観光滞在と結びついた編集が強い施設で、駅前で観光消費を立ち上げる役割を担ってきた。小田原市や商工会議所の資料でも、駅周辺の大型施設への来街集中や、ラスカ小田原、ミナカ小田原、ハルネ小田原の機能分化の必要性が指摘されている。つまり小田原駅前では、どの施設がどの需要を受け止めるかがすでに競争と再編のテーマになっている。そのなかでラスカが改札直結の3階入口を食で再編集するのは、ミナカが先に可視化した観光需要の一部を、駅ビル側でも取り切る狙いがあると考えるのが自然だ。
小田原の街自体も、その判断を後押ししている。小田原市は2023年の入込観光客数が約832万人、観光消費総額が約351億円となり、いずれも過去最高を更新した。さらに2024年度も観光客数は3年連続で過去最高となり、外国人の小田原駅観光案内所利用は2023年度の約1万2千人から2024年度は約1万5千人へ増えていると報じられている。小田原は東京圏から短時間で小田原城にアクセスでき、その先に箱根への導線も抱える街だ。地元駅であると同時に、城下町観光と温泉地への入口が重なる結節点でもある以上、駅前で立ち上がる需要を国内客だけで見るのは不十分だろう。
リーシングの観点から見ると、今回のリニューアルは「何を入れるか」以上に「どの需要を入口で拾うか」の再設計として重要だ。大型郊外施設のように長時間滞在を前提とするのではなく、乗換前後、帰路、出発前、観光途中の短い時間で成立する買い物や軽食を強めることで、駅ビルの即時性を価値に変えようとしている。しかもキーワードが「旅行土産」だけでなく「手土産」「自家需要」まで含んでいる点は、観光向けに振り切るのではなく、地元客、国内観光客、訪日客が交差する小田原駅の現実に合わせ、複数需要を一つの入口で重ね取りする設計を志向していることを示している。
今後の焦点は、実際に入る8ショップの顔ぶれだ。地場性の強いブランドをどこまで入れるのか、全国区の話題店をどう混ぜるのかで、このゾーンが「小田原らしい駅ビル入口」になるのか、単なる土産売場にとどまるのかが分かれる。また、ミナカ小田原が観光色の強い消費を受け止める一方で、ラスカ小田原が改札直結の即時需要を取る棲み分けが進むのかも注目点になる。今回の発表は20周年改装の告知に見えるが、本質は、小田原駅前で変化した需要構造に合わせて、ラスカ小田原が自らの役割を塗り替えにきたことにある。以下、 株式会社JR横浜湘南シティクリエイトのプレスリリースから画像を引用。




