日本橋丸直商店、EC発の祭装束ブランドが人形町に初の実店舗 「試着・相談」を購買体験に組み込む
祭装束・祭用品の専門店「日本橋丸直商店」(運営:合同会社丸直商店)が、2026年3月1日に東京・日本橋人形町で初の実店舗を開業する。2024年にオンラインショップとして始動し、SNSを通じて支持を広げてきたブランドが、リアル拠点を持つ段階へ進む形だ。出店理由として同社は「実際に商品を手に取りたい」「試着したい」「着こなしを相談したい」といった声を挙げ、店舗を“買う前の不安”を解消する場として位置付けている。
市場が伸びにくいとされる伝統領域で、あえて店舗を構える動きは逆風に見えやすい。ただ、縮小しているのは「従来の買われ方」であり、購買のハードルを下げる設計ができれば、成立余地が残る領域でもある。祭装束は、サイズ感や着用時の見え方、動作のしやすさなど、画面上の情報だけでは判断が難しい要素が多い。ECで購入まで到達する顧客が一定数いても、「最後の一押し」が試着や相談であるケースは少なくない。実店舗は、販売チャネルの追加というより、購買体験の未解決部分を埋めるための“最終工程”になり得る。
商品面では、伝統的なシルエットを踏まえつつ、現代の動きやすさに寄せた提案を打ち出す。例として、ストレッチ股引(累計販売数300着以上)や極短の地下足袋、バンブー手提げなどを掲げ、今後はオリジナル商品を約30点まで拡充する計画としている。ここでのポイントは、意匠の新しさよりも「着用時の不安を減らす」機能価値を前面に出していることだ。伝統領域の新規顧客獲得は、憧れや共感だけではなく、失敗しない確証を与えられるかで大きく変わる。
出店地として人形町を選んだ点も象徴的である。浅草のような目的来訪型の和装エリアとは異なり、生活・仕事・観光が重なる都心の街で、初来店者を含む幅広い層が入りやすい入口を作れる一方、店側には「説明と体験で納得をつくる」運用が求められる。開業当日は神田明神神職による祈祷、江戸消防記念会による木遣、鏡開きなどを予定し、購入者先着100名への記念品も用意する。これはイベントの賑わい以上に、文化的正統性と“場の物語”を可視化し、初めての顧客に安心感を与える装置として機能し得る。
商業施設・リーシングの観点では、この種の出店をチェーン拡大のモデルで評価すると論点がずれる。鍵になるのは店舗数の再現性ではなく、「納得まで導く購買プロセス」の再現性である。試着・採寸・着こなし相談を前提にするなら、回転率を上げる運営とは相性がよくない。むしろ、相談導線の設計、混雑時の待ちの扱い、ピーク期(祭礼シーズン)の体制、平常期の来店理由づくりといった運用の設計力が成否を分ける。店を持つ意味が問われるのは、売場の立派さよりも、相談が滞りなく回り、購入後の関係まで含めて次の来店理由を生めるかどうかだ。
今後注目したいのは、店舗が「売る場」に留まらず「拠点」へ寄れているかを判断できる追加情報である。店頭限定商品の比率、試着・相談の運用(予約の有無や所要時間の考え方)、購入後のフォローの設計、祭礼シーズン外の需要の作り方が示されれば、この出店が単発の話題に終わらず、伝統領域の“買われ方の再構築”としてどこまで踏み込むのかが見えてくる。
■ 店舗概要
店舗名 :日本橋丸直商店
所在地 :〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町1-15-8
営業時間 :10時00分~18時00分
定休日 :毎週木曜日
オープン日:2026年3月1日(日)





