伊右衛門カフェ、心斎橋路面へ──商業施設型から一段進んだ“売上を取りにいく”出店の意味
伊右衛門カフェが大阪・心斎橋に出店する。国内8店舗目となる今回の新店は、これまでの出店傾向とは一線を画し、路面立地を選択した点に特徴がある。リージョナル商業施設の主動線上を中心に展開してきた同ブランドが、あえて施設外に踏み出した背景には、業態とブランドの成熟がある。
伊右衛門カフェはこれまで、ららぽーとや駅直結施設など、前面通行量が安定的に担保された商業施設への出店を重ねてきた。日本茶という説明コストの高い商材において、通行量を背景に「ついで利用」で体験してもらえる環境は合理的であり、業態を磨くフェーズとしても適していた。商業施設側にとっても、年齢層を問わず、時間帯をまたいで利用される伊右衛門カフェは、動線上に置きやすい飲食テナントだった。
一方、心斎橋店は路面出店である。賑わいのあるエリアとはいえ、商業施設内のように来店が保証されるわけではない。その中で、モーニングを含む長時間営業を明確に打ち出している点からは、施設依存の集客ではなく、時間帯を広げることで売上を積みにいく設計が読み取れる。朝・昼・夕方と人流が連続する心斎橋だからこそ、営業時間そのものを売上装置として活用する判断と言える。
この展開を支えているのが、サントリーが長年育ててきた「伊右衛門」というブランドの成熟度だ。日本茶を日常の選択肢として定着させてきた飲料ブランドとしての蓄積があり、その正統性を福寿園という老舗が支えている。その上で、カフェ業態として成立させ、横展開可能な形に磨き上げてきたのがカフェ・カンパニーである。
カフェ・カンパニーは、ブランドを空間や体験として再構成し、商業施設や都市の文脈に適応させながら運営の再現性を高めてきた運営会社だ。伊右衛門カフェは、サントリーが育てた看板を単に掲げるのではなく、施設内での実績を積み重ねることで、路面でも売上を取りにいける業態へと段階的に引き上げられてきた。
心斎橋エリアは、スペシャルティコーヒー、老舗喫茶、体験型カフェがひしめく成熟市場である。その中で伊右衛門カフェが競合するのは、コーヒーそのものではなく「時間の使われ方」だ。日本茶は、モーニングの軽食、買い回りの合間の休憩、甘味としての利用まで、時間帯ごとに価値を切り替えやすい。路面で長時間営業が可能だからこそ、この一日の売上設計が成立する。
今回の出店は、商業施設側にとっては、成熟した飲食ブランドが施設外でも成立する段階に入ったことを示す事例であり、外向き区画や半路面の価値を再考する材料となる。一方、テナント側にとっては、商業施設で業態を磨いた先に、路面で売上を取りにいくフェーズがあることを示す具体例だ。
伊右衛門カフェ心斎橋店は、新店というよりも、商業施設依存から一段進んだ成長段階を示す出店として位置づけられる。メーカー、老舗、運営会社の役割分担が機能した結果として生まれたこの動きは、今後の飲食リーシングを考える上で、示唆に富む事例と言えるだろう。以下、カフェ・カンパニー株式会社のプレスリリースから画像と店舗概要を引用。
伊右衛門カフェ 心斎橋店
・住所 : 〒542-0086 大阪府大阪市中央区西心斎橋1-5-24
・電話番号:06-4708-6505
・オープン日:2月16日(月)
・定休日:なし
・営業時間 :6:45-21:00
(モーニング:6:45〜10:00)




