ワールド、ニュウマン高輪に3業態同時出店 循環・ライフスタイル多角化で示す現在地
国内アパレル大手のワールドグループは、9月12日に本格開業した「ニュウマン高輪」に3つの業態を同時出店した。出店ブランドはセレクトショップの「DRESSTERIOR(ドレステリア)」、キッチン雑貨専門の「212 KITCHEN STORE(トゥーワントゥーキッチンストア)」、そしてデザイナーズ古着を扱うユーズドセレクトショップ「RAGTAG(ラグタグ)」。ファッションから生活雑貨、さらには二次流通までを包含する布陣は、ワールドが近年歩んできた事業変革の軌跡を体現する内容となっている。
ワールドは1980~90年代にかけて百貨店を中心に急成長したが、バブル崩壊後の消費停滞や2000年代に入ってからのSPA台頭、百貨店市場の縮小に直面し、経営の方向転換を迫られた。2005年にはMBOによる上場廃止を断行し、非上場下で不採算ブランドの整理や店舗閉鎖など大規模な構造改革に取り組んだ。2016年前後には約500店舗の閉鎖やブランド統合を実施するなど、厳しい事業整理を経て収益基盤の立て直しを進めた。
その後、2017年に雑貨チェーンの「212 KITCHEN STORE」、2018年には古着の「RAGTAG」を相次いで買収し、アパレル単体からライフスタイルや二次流通へと事業領域を拡張。2018年の再上場以降はOMO戦略やB2B事業にも注力し、従来型の百貨店依存からの脱却を図ってきた。直近では、国内アパレル再生を目的とした再生投資や、国産ブランドとの資本業務提携を進め、サステナブルな循環型事業の構築にも取り組んでいる。
今回のニュウマン高輪出店は、そうした流れを凝縮した展開である。ドレステリアは百貨店時代から培ってきた高感度編集力を磨き直し、212キッチンストアは「衣」から「住」へと広げた生活提案を担う。そしてラグタグは、真贋鑑定やリペアを経てECと連動させるOMO型の二次流通を強みとし、施設内ではCFCLと連携した循環型サービス「Next Loop」の展開をサポートする。
高輪ゲートウェイ周辺は再開発が進み、インバウンドやオフィスワーカー、居住者が交差する新たな都市拠点として注目されている。その中核商業施設であるニュウマン高輪において、ワールドが3つの業態を同時に投入したことは、単なる出店ではなく「衣食住+循環」を包括するグループ戦略のショーケースと言える。バブル崩壊やリーマンショックを経て百貨店の衰退に直面しながらも、多角化と再編を繰り返してきた同社の現在地を象徴する出店事例として、業界関係者の注目を集めている。以下、同社のプレスリリースから画像を引用。