広島PARCOが2025年秋リニューアル 若者とインバウンドに特化した戦略的再編
広島市中心部の広島PARCOが、2025年秋にかけて大規模リニューアルを進めている。今回の刷新では回転寿司チェーン「スシロー」や新進気鋭のアパレルブランド群が登場し、若者層とインバウンド需要を強く意識した店舗構成が特徴となる。
広島市は中国・四国地方随一の商業都市でありながら、郊外型も含めた大型商業施設が集中し、典型的なオーバーストア都市とされる。西区のアルパークは大和ハウスグループが運営する郊外型ショッピングセンターとして存在感を維持し、イオンモール広島府中は中国地方最大級の規模でファミリー層を集客。2018年に開業したジ アウトレット広島は広域からの訪問客を取り込み、さらにコストコ広島倉庫店も強い支持を得ている。加えて中心部にはそごう広島店や広島三越が構え、それぞれ高感度層やシニア層を顧客基盤としている。こうした状況の中で広島は都市規模以上に商業床が供給され、各施設が明確なキャラクターを打ち出さなければ生存競争が難しい構図となっている。
その中で広島PARCOは、元来持つ「若者カルチャーとファッション発信」という強みを軸に再編を進める。今回のリニューアルでは、まず新館9階に「スシロー」が登場。大型タッチディスプレイ「デジロー」を導入し、流れる寿司を映像で見ながら指で操作できる新感覚の注文体験を実現する。注文額に応じて始まる「だっこずしゲーム」といったエンタメ要素も加わり、観光客やファミリー層を意識した都市型の新しい飲食体験を提供する。
本館1階では、東京発のアパレル企業yutoriが展開する4ブランドが約1か月ごとに入れ替わり出店する。「codegraphy」「Younger song」「HTH」「9090」といったZ世代に浸透するブランド群であり、SNSでの拡散力を背景に若年層の話題を集めることが狙いだ。さらに、同じフロアには中四国初進出となるハイエンドセレクトショップ「THE GALLERY BOX」、アッシュ・ペー・フランスが手掛ける「drama H.P.FRANCE」が登場する。いずれも感度の高い都市来街者やインバウンド客に向けた提案型のショップであり、従来のファッション中心の構成に一層の厚みを加える。
広島中心部の商業地は、観光と地元消費の双方を狙う複雑な構図にある。インバウンド観光客は原爆ドームや平和記念公園、宮島を目的に訪れるケースが多く、滞在時間の延びとともに市内での飲食や買い物需要が拡大している。こうした潮流を踏まえ、広島PARCOは観光客と若者を主要ターゲットに据えた明快なポジショニングを選択したといえる。
オーバーストア環境下で各施設がファミリー、ラグジュアリー、生活利便などの領域で棲み分けを進める中、広島PARCOは「若者×インバウンド」という組み合わせで競争に挑む。今後も都市型商業施設としてカルチャーとトレンドを掛け合わせた独自の存在感を発揮できるかが注目される。以下、株式会社パルコのプレスリリースから画像とリニューアル・新店一覧を引用。