高岡銅器の継承と革新──能作が東京ミッドタウンに初の複合ブランド店舗を開設
東京ミッドタウン・ガレリア3階に、鋳物メーカー能作による初のブランド複合店舗「NOUSAKU / NS by NOUSAKU」が2025年7月18日にオープンする。能作は1916年創業、富山県高岡市に本拠を置く鋳物メーカーであり、そのルーツである高岡銅器は400年以上の歴史を持つ日本を代表する伝統産業のひとつである。
高岡銅器は仏具や茶道具の鋳造に始まり、明治以降は装飾品や輸出工芸に発展、近年はデザイン性を重視した生活雑貨や建築素材などに活用の幅を広げている。能作はその中心に位置し、錫や真鍮など多様な素材を扱いながら、伝統の技術を現代のライフスタイルに応じて展開してきた。特に錫100%のテーブルウェアや真鍮製インテリアなどは、ギフト市場やインバウンド層を中心に高い評価を得ており、産地と素材のストーリーを活かしたブランディングが強みとなっている。
今回の出店は「NOUSAKU」ブランドとしては都内6店舗目、国内では20店舗目となるが、ジュエリーライン「NS by NOUSAKU」との複合店舗は初の試みである。「NS by NOUSAKU」は、錫と金を組み合わせた独自素材“Tin Gold”を採用し、装飾性と素材探究の精神を併せ持ったコレクションを展開している。素材の特性そのものをデザインの起点とし、単なる伝統工芸の域を超えた「素材発のデザイン」ブランドとしての位置づけを明確にしている。
店舗設計は、ドバイ万博日本館や東急歌舞伎町タワー、2025年大阪・関西万博パビリオンなどを手掛ける建築家・永山祐子氏が担当。NS by NOUSAKU コレド室町テラス店に続く設計事例となる。約62㎡の店内は、能作の職人による錫製の天井装飾や鋳物砂を活用した床材など、素材とクラフトマンシップを空間全体に反映させた設えとなっており、ブランドの世界観を建築的に体現している。
また、中央には新商品やイベント用のエキシビジョンスペースを設置し、季節やテーマに応じた展開を可能とする。ブランドカラーを用いた曲面の壁が緩やかに2ブランドのゾーンを分け、訪れる顧客にとっても明確な体験導線を提供する設計となっている。
7月20日には、NS by NOUSAKUの第2コレクション「Line and Curve」を手がけたアートディレクター・脇田あすか氏による来店イベントも開催される。脇田氏はPARCOやLUMINEのシーズンビジュアル、書籍装丁、ファッションや印刷物のグラフィックディレクションなどを手がけてきた気鋭のクリエイターであり、今回のジュエリーコレクションにおいても素材の柔らかさや光沢を生かしたアーティスティックな造形が注目されている。
同店ではまた、東京ミッドタウン先行販売アイテムとして、真鍮の花器や錫製の招き猫、金箔を施したぐい吞みやタンブラーなど7商品を展開。従来の能作製品と比しても高付加価値化されたラインナップで、ギフト需要にも応える構成となっている。
今後、工芸の体験やストーリーを求める都市型消費者にとって、こうした「素材と空間が響き合う商業施設内の展開」はさらに注目されると考えられる。高岡という産地の魅力を背景に、能作は次世代型工芸ブランドとして、都市部での浸透を一層加速させている。以下、株式会社能作のプレスリリースから画像と店舗概要を引用。
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■ 店舗情報
開店日:2025年7月18日(金)
店舗名:NOUSAKU / NS by NOUSAKU
所在地:〒107-0052 東京都港区赤坂9‐7‐4 東京ミッドタウン ガレリア3F
営業時間:11:00 – 20:00