老舗製茶問屋が挑む体験型日本茶業態 SHIKI JAPANESE TEAが黒門市場に出店
創業160年の老舗製茶問屋・多田製茶株式会社が、体験型日本茶専門店「SHIKI JAPANESE TEA(以下、SHIKI)」を大阪・黒門市場に開業する。2025年5月19日のグランドオープンをもって、これまで業務用流通が中心だった同社が、初めて一般消費者向けの直営店舗を展開することとなる。
出店地となる黒門市場は、食文化の集積地として知られる大阪市中央区に位置し、国内外の観光客が集まる観光拠点である。近年はコロナ禍を経てインバウンド需要が回復傾向にあり、とくにアジア圏からの来訪者による消費が再び活発化している。そうした中で、SHIKIが提供するのは単なる「お茶の販売」ではなく、選び・味わい・持ち帰るという一連の体験を通じた新しい日本茶の提案である。
店舗の中核を成すのは、日本初を謳う1,000通り以上の組み合わせによる「パーソナライズラテ」だ。独自に開発した“フレーバーチャート”を用いて、来店者は専用のQRコードから6つの質問に答えるだけで、自分の嗜好や気分に合った一杯を選ぶことができる。1日10組限定というプレミアム性を持たせた体験型サービスは、ラグジュアリー志向が高まる日本茶消費の潮流と合致しており、国内外の感度の高い層をターゲットに据えている。
商品構成にも注目が集まる。抹茶、煎茶、玄米茶、和紅茶、ほうじ茶といったベーシックなラインナップに加え、石臼で丁寧に挽いた宇治の御濃茶や、用途に応じて選べる日本茶パウダーの展開など、自宅でも楽しめるプロダクトも複数用意。すべての茶葉・合組は、同社所属の茶師八段・多田雅典が監修しており、専門性と品質の担保がなされている。
SHIKIのコンセプトは「一期一会」を軸に据えたもので、茶道の所作を取り入れた接客や、来店者との対話を重視したサービス設計がなされている。点茶はすべてスタッフがその場で丁寧に仕上げ、多様なカスタマイズにも柔軟に対応。これにより、感性と嗜好に訴える深度ある日本茶体験が実現されている。
背景には、日本茶を再定義し、現代のライフスタイルや価値観に接続し直すというブランド戦略がある。特に、健康志向やマインドフルネスといった世界的トレンドとも親和性の高い抹茶の存在は、北米や欧州でも注目されており、近年では“MATCHA”としてグローバルに受容が進んでいる。SHIKIはこの市場の動きを見据え、日本の都市観光と体験消費の接点に自社ブランドを置く構えだ。
直営店での対面販売に加え、家庭用パウダーやソフトクリームといった派生商品も展開することで、現地での「体験」と帰宅後の「日常使用」をつなぐ導線も構築されている。これは、単なる物販にとどまらず、日本茶の価値そのものを再定義しようとする意図の表れでもある。
老舗による初の直営展開でありながら、従来の枠にとらわれない発想と先進的なマーケティングが融合したSHIKIの出店は、インバウンド需要の回復、茶系業態の多様化、都市観光型商業施設における体験型店舗のあり方といった観点から、今後の注目事例となる可能性を秘めている。以下、多田製茶株式会社のプレスリリースから画像と店舗概要を引用。
店名:SHIKI JAPANESE TEA
住所:大阪府大阪市中央区日本橋2丁目11-7
営業時間:09:30〜17:00(不定休)
公式サイト:https://shiki-tea.jp/
Instagram:shiki_japanesetea