豊洲市場新エリア「豊洲 千客万来」の進展と未来展望: 築地からの移転と再開発の軌跡
築地市場の移転と再開発は、近代化と環境保護の交差点にある複雑な話題として、東京の経済と社会構造に大きな影響を与えてきました。元々築地市場は、1987年まで汐留駅から引き込み線が場内に敷かれるなど、鉄道輸送を前提とした設計であったため、現代のトラック輸送には対応できず、建て替えが必要とされてきました。
東京都は築地市場の移転を前向きに検討し始め、立地の良さと土地の広さを考慮して、2014年を目処に江東区豊洲への移転を計画していました。その過程で、新市場建設協議会が設立され、2004年には『豊洲新市場基本計画』が策定されました。
しかし、移転先予定地の土壌汚染問題が発覚しました。東京ガスの施設がかつて立地していたこの地域は、多くの有害物質が国の環境基準を超えるレベルで検出されました。特に発癌性物質であるベンゼンの濃度は、局地的な範囲ではあるものの、国の基準を43,000倍も超えていました。これにより、安全・衛生面の懸念や移転経費の増加、築地への愛着などが複合して、一部の仲卸業者からの移転反対運動が起こりました。これを受けて、東京都は2012年度から豊洲新市場の土壌汚染対策工事と技術者会議を行ってきました。
この間にも、築地市場の取扱量が減少し続け、1999年には「現在地再整備」案が提起されましたが、業界との調整が困難で費用も増大したため、計画は白紙化されました。さらに、築地市場の敷地でも土壌汚染が確認され、地下には被曝マグロが埋められている問題が浮上しました。
土壌汚染対策の進行とともに、新市場の開場時期も何度か変更されました。最初は2016年11月上旬の開場が予定され、名前も「豊洲市場」と決定されました。しかし、新たな土壌汚染問題の発覚などにより、開場が2018年10月11日に延期されました。
豊洲市場の商業および観光施設の開発はどうなっているかと言うと、いくつかの段階を経て進行してきました。2014年には、大和ハウス工業と喜代村がそれぞれ5街区と6街区の施設の運営を担当することが決定しました。しかし、翌2015年、両社はそれぞれ運営からの辞退を申し入れました。
2016年には、万葉倶楽部が新たな事業予定者として選定され、特に6街区の開発を進めることとなりました。しかし、2017年に東京都知事の小池百合子が築地市場の再整備と食の観光拠点の創設を発表したことで、万葉倶楽部は経済的な理由からプロジェクトへの参加を撤回しました。
この撤退後、東京都と万葉倶楽部は協議を続け、「千客万来施設」の再整備に向けた方向性が見えてきました。2018年8月の時点で、東京都は江東区議会への説明で2023年の開業を予定していたことを明らかにしました。そして、2023年2月、万葉倶楽部は施設の開業を2024年2月1日に予定していることを公表しました。
そしてこの度ついに万葉倶楽部株式会社から竣工に関するニュースが発信されました。開業まで約半年となった豊洲市場の新エリア『豊洲 千客万来』が、2023年9月末日に竣工予定であることが万葉倶楽部株式会社より発表されました。この新エリアは温浴施設と食楽施設から構成され、ウォーターフロントを一望できる展望足湯庭園や、江戸時代の食文化を称える“江戸の食の四天王『EDO4』”を堪能できる横丁や大通りが設けられる予定です。さらに、一部のテナントが先行して公開されました。
温浴施設「東京豊洲 万葉倶楽部」は、万葉倶楽部の全国11番目の施設として24時間営業を予定し、東京湾を一望できる露天風呂や展望足湯庭園などを提供します。訪れる方々は箱根・湯河原の名湯に浸かりながら、極上のリラクゼーション時間を楽しめます。
食楽施設「豊洲場外 江戸前市場」は、江戸の街並みを再現した商業施設であり、新鮮な食材の販売や提供が行われる予定です。この施設は3つのフロアで構成され、1階には日常的に利用できるグルメ店が多く設けられます。2階には活気ある市場を再現した「目利き横丁」と「豊洲目抜き大通り」があり、多種多様な店舗が展開されます。3階は寿司を楽しめるフロアとなっており、様々なスタイルの寿司店が出店予定です。
特に、「目利き横丁」では仲卸が目利きした新鮮な旬の食材や珍味を食べ歩きやカウンターで楽しめるエリアとなっており、豊洲市場の老舗水産仲卸企業「水長水産」が新たな海鮮炉端焼店舗を展開します。「豊洲目抜き大通り」では、うなぎ、寿司、天ぷら、蕎麦といった“江戸の食の四天王”を堪能できる名店が集結します。中でも「江戸 深川屋」では地元で大人気の「深川コロッケ」を提供する店舗が出店します。
さらに、新エリアには東京のローカルフードを提供する店舗も出店予定です。その中でも「河直商店」は昭和十年創業の青果仲卸店であり、今回が一般販売初となります。熟練職人が厳選した高級果物や珍しい果物などが販売され、その場で楽しめる「水菓子(フルーツカップ)」も提供されます。
新エリア「豊洲 千客万来」は、築地市場の活気とにぎわいを継承・発展させ、市場本体施設と連携して豊洲ならではの活気を生み出します。この新エリアの開業は、豊洲市場の魅力を高め、地域のまちづくりや活性化に貢献するものと期待されます。以下、万葉倶楽部株式会社のプレスリリースから画像を引用。