歩ける都市、保たれる商業──コンパクトシティ高松の静かな強さ
都市と商業 vol.7|高松市
“整った都市”が問いかける、商業の持続可能性──丸亀町から読み解く高松の現在地
四国の中枢都市・高松。人口は約41万人。コンパクトな都市構造と、瀬戸内の穏やかな景観に包まれながら、この街は商業のあり方において“重すぎず、軽すぎず”ちょうどよいバランスを保っている。大型の再開発ビルもなければ、広大な郊外型商業モールに頼りすぎることもない。その中心にあるのが、丸亀町商店街をはじめとするアーケード型の商業空間である。
民間主導の“まちの再編集”──丸亀町商店街の試み
丸亀町商店街は、全国でも稀な“成功した商店街再生”のモデルケースとして知られる。特徴は、単なる空き店舗対策やイベント施策にとどまらず、都市計画と不動産スキームを融合させた「再開発としての商店街再編」に踏み込んだ点だ。
A〜G街区に分かれた再整備計画では、商業施設・公共施設・住宅を組み合わせ、従来のテナント型商店街から複合機能型の都市空間へと転換。とくに図書館やホールを備える「丸亀町グリーン」や「丸亀町壱番街東館」は、買い物だけでなく“滞在”を意識した商業空間を形づくっている。
再開発は民間主導でありながら、地権者・市民・行政の三者が協調した点も特筆に値する。「商業の成功」というより「まちの継続性」を重視したプロセスが、商業施設を“都市の装置”として機能させている。
駅と港、都市が歩ける距離にあるという強み
JR高松駅から丸亀町までは徒歩圏内。さらに高松港へも直線的につながり、都市と交通と観光とが一体的に存在している。この「歩いて完結する都市構造」は、商業にとっても大きな利点である。
いわゆる“郊外モール依存”の構造とは異なり、高松では中心市街地がそのまま「暮らしの舞台」であり続けている。もちろん郊外に商業施設は存在するが、それらが中心部と競合するというより、生活圏を補完する関係性に近い。
“課題のなさ”こそがヒントになる都市
高松の都市と商業は、いま大きな危機にも爆発的成長にも直面していない。だが、だからこそ見えてくる価値がある。地方都市における商業の持続可能性──それは華々しさではなく、「暮らしの文脈に沿って、まちと商業が並走できるか」にかかっている。
高松のような都市は、拠点を無理に増やさず、更新しながら守り、地域の人々が“ここで過ごす理由”を静かに積み重ねてきた。そのプロセスこそが、これからの地方都市のヒントとなるのかもしれない。