椿屋茶房、大宮に初出店──銀座発の“上質喫茶”が描く新たなブランド進化
銀座・花椿通りから始まった「椿屋珈琲」は、東和フードサービスが手がける高級喫茶ブランドとして知られる。1996年、同社が開いた銀座七丁目の1号店は「花椿通り」の名にちなんで「椿屋珈琲店」と名づけられた。大正ロマンを思わせる内装や、サイフォンで丁寧に抽出されるコーヒー、クラシカルな制服に象徴される接客など、当時のカフェチェーンにはなかった“非日常性”が多くの支持を集めた。以降、同ブランドは都心を中心に静かに拡大し、上質な喫茶文化を再び都市に根付かせる役割を果たしてきた。
直営展開を貫く東和フードサービスは、ダッキーダックやぱすたかんなど複数業態を展開する中で、椿屋ブランドを「品質と体験」を核に据えた象徴的存在として育ててきた。近年は焙煎所併設型店舗の設置や国際コーヒー品評会への参画など、単なる喫茶店の枠を超えた活動も進めている。2025年にはサイフォン抽出技術を競う「ジャパン サイフォニスト チャンピオンシップ」で自社バリスタが優勝、世界大会でも5位に入賞するなど、技術とストーリーの両面でブランド価値を高めている。
その流れの中で誕生するのが「椿屋茶房 大宮店」である。埼玉県さいたま市・大宮そごうビル専門店街「オズ24」1階に10月21日開業する新店舗は、武蔵一宮氷川神社の参道をイメージした空間設計を採用。四季のうつろいを感じる色調と照明設計が、同ブランドの世界観を新たなかたちで表現している。
提供されるのは、サイフォンで抽出するスペシャルティコーヒー。世界でもわずか10%しか流通しない希少豆を使用し、今回はブラジル産の「カップ・オブ・エクセレンス」入賞ロットをオークションで落札。フローラルで華やかな香りをもつコーヒーとして提供される。さらに、北海道産小麦と和三盆糖を使った「プレミアムプレーンシフォン」も同時期限定で販売。7店舗のみで展開される特別メニューとして、デザート分野のブランド性を高める狙いがある。
椿屋茶房は、コーヒー専門店と洋菓子サロンの中間に位置づけられる業態だ。落ち着きある内装と食事・デザートメニューを併せ持つことで、百貨店内カフェゾーンにおける滞在価値を引き上げる構成となる。東和フードサービスにとって大宮は、東京圏外への展開をさらに加速させる上での新たな試金石となる。
銀座で生まれた“上質な時間”を象徴する喫茶文化が、今、地域性と技術を携えて次のステージへと歩み始めている。以下、東和フードサービス株式会社のプレスリリースから画像と店舗概要を引用。
■店舗概要
【店舗名】
椿屋茶房 大宮店
【所在地】
埼玉県さいたま市大宮区桜木町1-6-2 大宮そごうビル内 専門店街オズ24 1階
【アクセス】
JR・私鉄各線「大宮駅」西口より徒歩2分
【営業時間】10:00~21:00(ラストオーダー20:30)
【席数】62席
【電話番号】048-871-8334