東急・鷺沼駅前再開発、今冬着工へ──駅改良と一体で進む都市機能の再構築
神奈川県川崎市の鷺沼駅前エリアにおいて、駅と一体となった大規模再開発プロジェクトがいよいよ始動する。東急株式会社および東急電鉄株式会社は、鷺沼駅前地区市街地再開発組合と連携し、2025年冬を目途に鷺沼駅の改良工事に着手する。都市機能と交通機能が交差する駅前において、再開発ビルと改札が直結する構造を取り入れ、ウォーカブルで回遊性に富んだ都市空間の実現を目指す。
本プロジェクトは、第一種市街地再開発事業として計画されており、対象面積は約2.3ヘクタール。再開発区域は駅前街区と北街区に分かれ、駅前街区には地上32階建て・延床面積約83,000㎡の高層複合ビルが建設される。ここには商業、住宅、事務所に加え、図書館や市民館、大ホールといった公共施設も併設される。北街区には宮前区役所が移転予定で、小ホールや住宅機能も計画されている。
特徴的なのは、田園都市線・鷺沼駅の機能強化と同時並行で進行する点だ。駅には新たに再開発ビル地下1階と直結する改札口を設置し、ホームへのエスカレーターやエレベーターも整備される。これにより、バス・タクシーを含む交通広場との乗換動線がシームレスになり、交通結節機能が飛躍的に向上する見通しだ。さらに、駅北口と再開発ビル側を接続する南北自由通路を新設し、その沿道には新たな商業施設が配置される。駅前に賑わいと交流の場を創出する広場空間やイベント可能なステップテラスの整備も予定されており、これまで駅南北に分断されていたエリアを一体化させる構想である。
再開発事業の施行者には、東急グループ各社に加えて、セレサ川崎農業協同組合、横浜銀行、三井住友信託銀行など、地域金融や農業系組織も参画していることが特徴的で、まさに地域を挙げた都市再構築事業といえる。なお、駅前街区の完成は2031年度、北街区は2035年度の竣工を予定している。
この計画は、再開発ビルの建設というハード整備にとどまらず、公共・交通・商業機能を一体で設計する都市型拠点形成のモデルケースとなり得る。とりわけ南北自由通路や交通広場の拡充といった歩行者目線の動線設計は、今後の郊外中核駅における再開発にも示唆を与える内容である。
多世代対応型の住宅、子育て支援施設、文化施設が共存する本事業により、鷺沼は単なる通過点から、地域生活の「核」としての存在へと生まれ変わろうとしている。今冬の着工を皮切りに、2030年代半ばの完成へ向けたまちづくりが本格化する。以下、東急株式会社のプレスリリースからイメージパースを引用。