昭和レコード再評価の動きが福岡・天神で加速 Face Records福岡店開業が示す音楽文化継承の現在地
アナログレコード専門店「Face Records」が福岡市中央区のワンビルに新店舗を開業し、若年層の支持を背景に順調な滑り出しを見せている。これにあわせて開催された昭和100年をテーマとしたイベントが各地で盛況となり、再び注目を集める昭和レコード市場と、高齢化に伴う「2025年問題」への懸念が浮き彫りになってきた。
1994年創業のFace Recordsは、東京・渋谷を拠点とするFTF株式会社が展開する中古レコード専門店。今回の福岡出店は、同社にとって九州初進出となる。出店地である天神エリアは、福岡市の中でもとりわけ若者文化やサブカルチャーが集積する都市型商業ゾーンであり、Z世代やミレニアル層の音楽カルチャー消費を促すには好適な立地だ。
オープンから1か月間でレコードプレーヤーが91台販売されるなど、レコードを再評価する動きは従来の中高年層にとどまらず、若い世代にも広がっていることが明らかになった。販売の中心となったのは、昭和を象徴する邦楽・洋楽の名盤で、クイーンやビートルズ、YMOや松任谷由実といった定番アーティストが軒並み上位に並ぶ。昭和レコードは「懐かしさ」ではなく、あらためて「新鮮さ」をもって若年層に受け止められている。
一方で、こうした関心の高まりと裏腹に、昭和レコードを取り巻く文化的な危機も進行している。いわゆる「2025年問題」だ。かつて1970年代後半に年間2億枚を超えるレコードが国内で生産されていたが、それを支えていた団塊・新人類・バブル世代が今、高齢化のただなかにある。団塊世代は今年から後期高齢者に移行し、保有レコードの整理や処分が進む中、相続人や家族がその価値に気付かず、文化資産としてのレコードが大量に廃棄される懸念が指摘されている。
実際、Face Records福岡店でも「親が集めていたレコードの扱いに困っている」といった声が数多く寄せられているという。背景には、インターネットを使い慣れない高齢者が適切な売却・寄贈先を見つけられないこともある。これは、商業施設におけるレコード買取・再流通の拠点づくりが、今後ますます重要な意味を持つことを示唆している。
Face Recordsは、レコードを「単なる物」ではなく「音楽文化のバトン」と位置づけ、廃棄ゼロを掲げた買取再流通サービスを強化。店頭のみならず、ECサイトや買取専門サイトを通じてレコード文化の持続的な循環を志向している。福岡店のような都市型店舗は、昭和レコードの「終着点」ではなく、「次の世代へつなぐ接点」としての役割が期待される。
2025年、「昭和100年」を迎える今、レコードの価値を見直す動きは文化資産としての商材評価にとどまらず、商業施設における文化的体験の提供という視点からも注目されている。消費と継承の接点をいかに施設内に創出できるか。Face Records福岡店の事例は、その問いにひとつのヒントを与えている。以下、FTF株式会社のプレスリリースから画像を引用。