日常に埋没しやすい低層商業に新機軸──旭川「ONE SEVEN」、地域初ブランドと公共性で差別化
マンション低層階の商業フロアは、駅近という好立地であっても退店・業態入れ替えが多いカテゴリーだ。利用者が主に居住者と周辺住民に限られ、商圏が狭くなりがちであることが背景にある。加えて、面積や設備の制約、街路に埋もれやすい視認性の低さも集客を難しくする要因だ。開業時には話題性で賑わっても、半年から数年で利用が日常に埋没し、目的来店が減少すれば撤退に至るケースは全国で後を絶たない。
全国の都市開発では、この課題に対応するためのモデルが模索されてきた。東京・文京区の「文京シビックタワー」では、タワー住民と来街者の双方を取り込むべく老舗ベーカリーとカフェを1階に配置し、上層階の公共施設利用者との相互送客を促した。大阪・上町台のグランドメゾンでは、地域密着型の高級ベーカリーと医療機関を組み合わせ、日常需要と固定需要のバランスを取る。これらの事例に共通するのは、単なる利便性だけでなく、外部からの目的来店を誘発する要素を組み込む点にある。
こうした全国的な傾向を踏まえ、旭川駅前の分譲マンション「プレミスト旭川ザ・タワー」低層部に開業した商業エリア「ONE SEVEN」は、差別化と公共性を組み合わせた構成で挑んでいる。1階には札幌市で人気を誇るベーカリー「どんぐり」の系列店「コロコロ」が旭川市に初進出。創業42年のブランド力に加え、旭川の事業者と共同開発したオリジナル商品を提供し、地域住民の日常利用に加えて観光客や買物公園の通行者を取り込む狙いだ。
2階には旭川初の「湘南美容クリニック」と歯科医院「Kデンタルオフィス旭川」を導入。医療・美容医療は固定需要が高く、長期安定運営につながる業態であり、飲食や物販に比べて入れ替わりリスクが低い。さらに1階には路線バスの待合所と公開空地を設置し、地域住民や観光客が自由に利用できる空間を確保。ベンチやテーブル、バス時刻表表示モニターなどを備え、商業フロアを単なる店舗集合体ではなく、街の滞留拠点として機能させる。
この「地域初ブランド+固定需要業態+公共空間」の組み合わせは、地方中核都市の低層商業における課題解決モデルとして注目される。特に、旭川のように冬季の外出が制約される都市では、交通結節点としての機能と屋内滞留空間の提供が利用頻度維持の鍵を握る。今後は、地元事業者とのコラボイベントや季節商品など、開業時の話題性を継続的に更新する仕組みが求められるだろう。
マンション低層商業は全国的に“日常に埋没しやすい”宿命を抱えるが、旭川「ONE SEVEN」はその弱点を補う仕掛けを組み込んだ。地域の回遊性向上と生活利便性を同時に高める取り組みは、今後の地方都市再開発における有効な参考事例となりそうだ。以下、大和ハウス工業株式会社のプレスリリースから画像と物件概要を引用。
【物件概要】
物件名称:「プレミスト旭川ザ・タワー」
所在地:北海道旭川市1条通7丁目47-1
交通:JR函館本線・JR宗谷本線(石北本線直通含む)・JR富良野線「旭川駅」徒歩4分
敷地面積:2,138.24㎡
建築面積:1,729.45㎡
延床面積:21,749.78㎡
構造・階数:鉄筋コンクリート造・地上25階・地下1階建て(一部鉄骨造)
建物用途:
店舗(1階):241.86㎡(73.16坪)
バス待合所(1階)
医療施設(2階):164.86㎡(49.87坪)
歯科医院(2階):263.88㎡(79.82坪)
分譲マンション共用部(地下1階・1階・2階・18階)
分譲マンション専有部(3階~25階)
機械式駐車場
売主:大和ハウス工業株式会社
設計・監理:旭川1・7設計共同企業体(三井住友建設・街制作室・柴滝設計事務所)
施工:三井住友建設株式会社
着工:2022年1月
竣工:2025年1月15日
引き渡し開始:2025年3月1日
総戸数:151戸(別途:店舗1戸・管理事務室1戸・ゲストルーム2戸・スカイビューラウンジ1戸・オーナーズラウンジ1戸)
専有面積:49.38㎡(1LDK)~156.45㎡(4LDK)
お客さまお問い合わせ先:「プレミスト旭川ザ・タワー」マンションサロン
TEL:0120-157-075 ※建物内モデルルーム見学は予約制
営業時間:10:00~18:00 定休日:火・水曜日(祝日を除く)