富山市公設卸売市場再整備、“にぎわい施設”着工で完成へ――市場更新を「大型小売の同居」で成立させるモデル
富山市公設卸売市場の再整備は、「市場を新しくする」話であると同時に、公共インフラの更新をどう成立させるかという資金設計の話でもある。施設を造り替えるだけでは回らない局面で、余剰地を民間収益施設に転じ、投資と維持の負担を構造的に支える設計へ踏み込んでいる点が、この案件のニュース価値だ。
その設計の最終ピースとして、大和ハウス工業は市場関連施設「にぎわい施設」を2026年2月6日に着工するとした。飲食と物販の複合で、延床面積は約1,630㎡、最大18店舗が入居できる区画を設け、昭和レトロの“まちなみ”をコンセプトにする。竣工は2026年8月31日予定で、これにより再整備事業の工事が完了し、2026年秋に全施設開業を見込むとしている。
段階的に更新してきた市場に、最後に「一般客向けの滞在・回遊」を組み込むのが今回の位置づけになる。にぎわい施設では市場関係者による生鮮・加工品の販売や、地元食材を使う海鮮丼、定食、ラーメン等の飲食誘致を掲げ、イベントの開催も検討するとしている。市場を“業務の場”に閉じず、地域の消費と接続する窓口を用意する狙いがここにある。
ただし今回を、従来よくある「市場の一般開放」や「場内食堂の強化」と同じ延長で語ると論点を外しやすい。食の周辺であれば市場との接続は濃くなるが、富山の再整備は、敷地内に大型小売を束ねて生活利便の集積を作る色が強いからだ。市場と商業の“相乗効果”を主語にするより、公共更新を事業として回すための同居だと捉えたほうが読みやすい。
実際、商業エリアには食品スーパー、ドラッグストア、家電量販店、大型スポーツ専門店といった業態が計画されている。ここで期待されるのは「市場に来たついでにゼビオへ」ではなく、反復需要(食品・ドラッグ)と目的買い(家電・スポーツ)を同居させて敷地の稼働を平準化し、賃料と集客の安定で全体スキームを支えることだ。市場の繁閑とは別のリズムで人を呼べる構成にしておくほど、公共施設更新の“持続性”は強くなる。
同居が難しくなるのは、むしろ運営の局面である。市場は衛生と物流効率が生命線で、商業は滞在と回遊で価値を作るため、動線と時間帯を誤れば相互に足を引っ張る。賑わいを作る以前に、業務車両・搬入・関係者導線と、一般来場者の導線をどう分離し、ピーク時の混雑や駐車需要をどう制御するかが、施設としての評価を決める要所になる。
にぎわい施設の「昭和レトロ」も、雰囲気づくりで終われば一過性の集客装置に留まる。テナント構成を“富山の食と手土産が揃う編集”として組み、イベントも含めて更新性を持たせ、再来店理由を積み上げられるかが問われる。最大18区画という規模感は、単に店数を並べるより、用途と価格帯を噛み合わせて回遊と購買の流れを作れるかどうかが成果に直結する。
この案件をリーシングの観点で読むなら、焦点は相互送客の派手さではなく再現性にある。公設市場の再整備で余剰地が生まれ、公共側の更新負担が重いという条件は、他地域でも起きうる。だからこそ、開業後に見るべき評価軸は、商業エリアが日常の買い回り拠点として定着するか、市場機能が業務インフラとして安定運用できるか、そして両者が干渉せずに共存できる運営設計が成立しているかに置かれるべきだ。
2026年秋の全施設開業は、ハード整備の区切りに過ぎない。市場更新と大型小売集積の同居が「便利になった」で終わるのか、公共更新の新しい成立モデルとして他地域に波及するのかは、開業後の運用と数字が決める。にぎわい施設が作る滞在価値と、商業エリアが作る日常価値を、衝突させずに同じ敷地で回せるかが、次の注目点になる。以下、大和ハウス工業株式会社のプレスリリースから画像と施設概要を引用。
■にぎわい施設・店舗
名称 にぎわい施設 規模・構造 平屋建て・重量鉄骨造 延床面積 約1,630㎡ 事業主 大和ハウス工業株式会社 設計 大和ハウス工業株式会社 施工 塩谷建設株式会社 着工 2026年2月6日 竣工 2026年8月31日 ■市場施設
名称:青果棟/関連店舗事務所棟/水産棟/空箱再生施設棟
規模・構造:2階建て重量鉄骨造/3階建て重量鉄骨造/2階建て重量鉄骨造/平屋建て重量鉄骨造
延床面積:7,287.00㎡/4,789.20㎡/4,190.20㎡/330.00㎡
事業主:東京センチュリー株式会社、NTT・TCリース株式会社
設計:株式会社押田建築設計事務所
施工:大和ハウス工業株式会社
着工:2022年2月1日/2022年2月1日/2023年8月17日/2024年11月22日
竣工:2023年1月31日/2023年1月31日/2024年6月28日/2025年3月28日
■商業施設棟
名称:ゼビオ/ヤマダデンキ/ドラッグトップス/平和堂
規模・構造:平屋建て重量鉄骨造/2階建て重量鉄骨造/2階建て重量鉄骨造/平屋建て重量鉄骨造
延床面積:3,969.57㎡/9,946.10㎡(家電量販店)1,598.00㎡(配工センター)/942.86㎡/2,995.92㎡
事業主:大和ハウス工業株式会社
設計:株式会社押田建築設計事務所
施工:大和ハウス工業株式会社
着工:2025年10月20日/2025年10月1日/2026年1月30日/2025年10月20日
竣工:2026年8月31日
■富山市場公設卸売市場
名称 「富山市公設地方卸売市場」 所在地 富山市掛尾町500番地 アクセス 富山インターチェンジから約1.2km、JR「富山駅」から約4.3km 敷地面積 約123,000 ㎡ 延床面積 約3.8万㎡(全施設) 開業予定 2026年秋






