大江戸温泉物語グループ、2025年下半期に見る「施設ポートフォリオ再編」という選択
2025年下半期、GENSEN HOLDINGS(大江戸温泉物語グループ)は、新規出店3施設、リブランド・リニューアル2施設を実施した。内訳は「TAOYA」ブランドによる新規リゾートホテル2施設、「大江戸温泉物語Premium」による新規1施設、そしてPremiumシリーズ2施設の改装である。年間では新規出店4施設、リブランド・リニューアル9施設、計13施設に及び、既存ストックを含めた施設網の再編が進んだ一年となった。
この動きは、単なる出店拡大ではなく、施設ポートフォリオの再整理として捉える必要がある。大江戸温泉物語というマス向け温泉ブランドに対し、TAOYAは大人向け・オールインクルーシブ型の高付加価値リゾート、Premiumは既存温泉地における体験価値の底上げを担う位置づけとなっている。商業施設に置き換えれば、同一デベロッパーが価格帯・滞在時間・利用目的の異なるテナントを意図的に配置し、施設全体の役割分担を再設計している構図に近い。
新規出店となったTAOYA南志摩、TAOYA箱根はいずれも、観光地として成熟した立地にありながら、周辺観光への依存度を下げ、施設内で滞在価値を完結させる設計が特徴だ。インフィニティ温泉、時間帯別に構成されたラウンジサービス、景観を主役とした共用部は、来訪目的そのものを施設内に内包する仕組みである。これは郊外型商業施設が、周辺集客ではなく施設体験そのもので滞在時間を伸ばす設計と共通する発想といえる。
一方、Premium岩手花巻の新規開業、Premium志摩彩朝楽・Premium恵那峡のリニューアルでは、大規模増床や建て替えではなく、既存施設の再編集に投資が集中している。露天風呂の新設や拡張、大浴場の統合、レストランの全面改装といった手法は、面積拡張ではなく体験の再配置によって価値を引き上げるアプローチであり、老朽化が進む商業施設のリニューアル手法とも重なる。
特に注目すべきは、全国チェーンでありながら、各施設が地域文脈を体験の中核に組み込んでいる点である。志摩の海景、花巻の渓谷、恵那峡の湖畔といった立地特性は、単なる説明要素ではなく、ラウンジ、温泉、食事空間の設計に反映されている。標準化と地域性を両立させるこの設計は、ナショナルチェーンが地方商業施設へ出店する際の課題に対する一つの実装例と見ることができる。
こうした展開を総合すると、大江戸温泉物語グループの2025年下半期の動きは、出店数の多寡よりも、既存資産をどう再定義し、ブランドごとに役割を与えるかに重心が置かれていることが分かる。2028年に向け全国78施設体制を掲げる同社の計画は、拡大路線というより、成熟市場における施設価値の再設計モデルとして、商業施設運営にも示唆を与えるものとなっている。以下、GENSEN HOLDINGS株式会社のプレスリリースから画像を引用。
TAOYA南志摩|2025年9月24日グランドオープン(三重県)
TAOYA箱根|2025年11月1日グランドオープン(神奈川県)
Premium 岩手花巻|2025年12月19日グランドオープン(岩手県)
Premium 志摩彩朝楽|2025年12月26日リニューアルオープン(三重県)
Premium 恵那峡|2025年12月26日リニューアルオープン(岐阜県)








