大戸屋、病院内出店を拡大──宇治徳洲会病院に「ごはん処」開業で地域密着型モデルを深化
定食チェーン「大戸屋ごはん処」を展開する株式会社大戸屋は、2025年6月27日、京都府宇治市の宇治徳洲会病院内に新店舗「大戸屋ごはん処 宇治徳洲会病院店」をオープンした。出店場所は臨床教育センター1階、72席を有する店内は自然光が差し込む開放感のあるつくりで、来院者や病院スタッフに限らず、地域住民も利用できる設計となっている。
大戸屋にとって病院敷地内への出店はこれまでも複数実績があるが、近年はとくに医療機関や大学、官公庁への進出が目立ち、生活インフラとしての定食業態の新たな接点を模索する動きが鮮明だ。今回の宇治徳洲会病院店では、無料送迎バスの利用を前提とした来店動線も整備されており、病院利用者の利便性と地域との接点の双方を意識した立地選定となっている。
病院内への商業テナント導入はここ10年ほどで急速に進んでおり、とくにカフェや軽食、コンビニエンスストアを中心とする導入が全国の病院で常態化している。スターバックスやタリーズなどのブランドカフェが大学病院を中心に出店するほか、セブン-イレブンやローソンといった大手コンビニが病院売店に代わる形で多数展開している。こうしたなかで、フルサービス型の定食業態が院内に出店する事例は限定的であり、大戸屋の取り組みは商業施設運営者やフードサービス業者にとって注視すべき動きと言える。
同店では、創業当時から人気の「チキンかあさん煮」や、看板商品である「鶏と野菜の黒酢あん」「さばの炭火焼き」など、大戸屋の代名詞ともいえるメニューを提供。いずれも無添加への配慮がなされており、健康に対する意識が高い医療従事者や患者・家族にも受け入れられる構成とした。加えて、手作りの味をそのままに楽しめるテイクアウトにも対応し、病院滞在中だけでなく家庭やオフィスでも活用可能な選択肢を用意している。
医療施設内における飲食業態の導入には「栄養価の高い食事提供」「安心・安全な衛生環境」「多様な来訪者ニーズへの対応」が求められる。その意味で、大戸屋が打ち出す「からだ想いな定食」という軸足は、まさにこうした条件を満たす業態モデルといえる。また、宇治市という住宅地と観光地が混在する立地特性からも、同店の存在は単なる院内飲食にとどまらず、地域のセミパブリックなコミュニティ食堂としての機能を果たすことが期待される。
人口の高齢化や通院頻度の増加にともない、医療施設は単なる診療の場から、日常的に人が集まる地域の生活拠点へと変貌を遂げつつある。そこに商業機能を積極的に導入する流れは今後さらに広がると見られ、病院内という限定空間における飲食・物販の在り方は、商業施設開発者にとっても新たなフィールドとなっている。
今回の出店は、外食チェーンによる「社会インフラ型ロケーション」へのアプローチを体現する事例であり、商業空間が多様な生活シーンに適応していく時代において、食の提供価値を再定義する動きとして注目したい。以下、株式会社大戸屋のプレスリリースから画像と店舗概要を引用。
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宇治徳洲会病院店
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〒611-0041
京都府宇治市槇島町石橋145番 宇治徳洲会病院 臨床教育センター1階TEL:0774-34-7222
営業時間:10:00〜21:00(L.O 20:30)