商業施設の賢人に聞く6つの質問 プロフェッショナルリーシングエージェント 樋口博明氏
姉妹サイトである商業施設の賢人たちにご登録いただいているコンサルタントの皆様へのインタビュー記事です。今回は数多くのデベロッパーとテナントを結びつけた樋口博明氏。長年にわたりリーシングのプロフェッショナルとして数多くの店舗の開店に携わった賢人です。今回は商業施設動向に関しまして6つの質問をいたしました。
最近の商業施設の動向についてはどうお考えですか?
私がこの業務を始めた25年前頃はDV(施設側)とテナントのパワーバランスが拮抗していた頃で機能的で効率的に集客できる商業施設と流行を発信するテナントが切磋琢磨し消費者に提案し購買意欲を駆り立てる事でデベロッパーもテナントも双方で売上を作っていました。テナントリーシングの立場から言うとテナント側にMDの変更や新規ブランドの立ち上げをお願いし、施設側にも様々な条件交渉を行い両者が一体となった店舗作りを行っていました。残念ながら昨今では商業施設の乱立と衰退でどこへ行っても同じようなテナント群でつまらないと言う声が各方面から聞こえてきます。
最近のテナントの動向についてはどうお考えですか?
施設側だけの要因ではなくテナント側でも問題はあります。ファッションでいうと川上であるアパレルメーカーが物を作らなくなったというかそのメーカーの独自性とかこだわりを出してこなくなった事もつまらなくなった原因だと思います。メーカーオリジナルのデザイナーやパタンナーを育てるより短期的に物づくりをし、さもすれば素材やデザインをコピーし商品化しているメーカーもあります。当然、店舗に並べられても魅力のある商品とは言えずプライス重視の低価格バーゲン品にしか映らないのが現状です。
最近のテナントリーシングの状況はいかがでしょうか?
「物はネットで買えるし、そのうち実店舗は無くなるんじゃないの?」と言う人がいます。私はそうは思いません。役割分担だと思っています、実店舗の役割をきちんと定義し地域や施設と融合しあうテナントを探し出す事、作り出す事が今後の課題だと思っております。物販店・飲食店・サービス店 それぞれの業種業態の中で何が融合し合うかをマーケティングし既存で無ければ作り出す事に注力しなければならないと考えております。
テナントのトレンドもしくは気になっている業態などをお教えください。
これは私だけのトレンドかもしれませんが、一つの店舗内で裏が工房(ファクトリー)で表で販売するという観光地型の店舗に注目しております。商業施設が時間消費の場所になっていく中で加工や修理などの場面を演出して見せる店舗が増えてくれば楽しいかもしれません。都心の施設側の理解を得るのはかなり困難ですが・・・。
気になっている小売業の企業などございましたらお教えください。
チェーン展開の創始ともいえるチヨダグループさんにはいつも注目しています。靴の専門店ですが以前はカバン専門店・おもちゃ専門店・カジュアルショップなど幾つもの業種をお持ちでした。今は靴に特化されていますが豊富な経験の中で今後どういった店舗ブランドを作っていかれるのか、またどのようなスタイルで販売されていかれるのか、楽しみです・
最近テナント企業とお話されていて感じられているご要望などございますか?
趣味や娯楽の多様化が進む中で頭角を現してきたのが最近はバイクショップとかスポーツジム・地産地消物産店などが上げられます。今までは独立した店舗展開を好んでいましたが昨今は複合の商業施設に出店を考えているとよくお問合せを頂くようになりました。競合店があるなかでいち早く単独店から複合施設へ方向転換してバリューを広げたいとの事です。これらの商業施設では異質とされてきた業種を取り込むことによって差別化の利いた商業施設が望まれます。