原宿キャットストリートに4層で“滞在”を編む──「Quaro」開業が示す、都市型リーシングの新しい評価軸
原宿キャットストリート近接の渋谷区神宮前4-25-32に、コーヒーとカルチャーを融合した4フロア構成の新スペース「Quaro」が、2026年2月11日(水)にグランドオープンする。営業時間は8:00〜20:00。B1にロースタリー、1Fにカフェ、2Fにノンアルコール中心のミュージックバー、3Fにギャラリー/ポップアップを配置し、「都市の中で感覚を回復する」体験を掲げる。単体のカフェというより、機能を層で分節した“縦型の複合店”として立ち上がる点が特徴だ。
このニュースを単なる新店情報以上に捉える鍵は、コーヒー市場の成熟と立地の競争条件にある。サードウェーブ以降、スペシャルティコーヒーは「味の差」だけで語り切れない領域へ広がり、抽出プロセスや空間体験を含めた“関与の深さ”が価値になりやすい。一方、原宿・表参道圏は選択肢が多く、コーヒー単体の強さだけでは埋もれやすい。そこでQuaroは、焙煎(B1)という裏側の機能を見せ場化し、音(2F)と展示・更新(3F)を組み合わせることで、コーヒーを入口にしながら「時間の使い方」自体を商品化しようとしている、と解釈できる。
商業施設の視点に置き換えると、Quaroが提示しているのは「館が欲しがる機能の束」を、1棟で成立させる設計である。施設運営はしばしば、物販では滞在が伸びにくく、飲食では更新性が弱く、イベントは日常需要が薄いという分断に直面する。その分断を跨ぐために、館は“滞在の受け皿”と“話題の更新装置”の両方を必要とする。Quaroの構成は、1Fで日常利用を確保しつつ、3Fのポップアップで再訪理由を作り、2Fの音で体験の差分を付け、B1のロースタリーでブランドの「中身」を語れる状態にする。これは、都市型施設で言えば、単に集客するテナントというより、館の体験価値を編み直すハブに近い発想だ。
ただし、商業施設側の観点を入れるほど、価値と同時に導入難易度も明確になる。音を扱う業態は、同一フロアや上下階への干渉、時間帯による求められる静けさの違い、客層の混在といった運用課題を抱えやすい。展示・ポップアップは更新頻度が価値の源泉である一方、企画の強度が落ちた途端に空気が止まりやすい。焙煎設備を伴う場合は換気・匂い・搬入・保守など施設側の制約も増える。したがって、この種の編集型飲食を館が取り込むなら、「世界観が良い」だけでなく、待機列の設計、縦動線の滞留対策、イベント日の誘導・警備、音量管理など、成立の条件を握れるかどうかが成否を分ける。
リーシングの評価軸も、従来の「飲食の売上」だけでは捉えにくい。Quaroのような構成が館内に入った場合、真価は周辺テナントへの波及で測るべき領域が大きい。滞在時間が伸びるか、回遊の起点になれるか、平日昼と週末で役割分担が成立するか、情報発信の核として館の“見え方”を更新できるか。とりわけ都市型施設では、来館者が「何をしに来たか」の目的が多様で、買い物のついでに過ごす時間の質が再来館を左右しやすい。飲食を“補完”として見るのではなく、体験を編集する装置として扱えるかが焦点になる。
今後の注目点は三つに集約される。第一に、3Fのポップアップ/展示がどれほど継続的に更新され、来訪理由として機能するか。第二に、2Fの音体験が時間帯や客層と矛盾せず、滞在価値として定着するか。第三に、混雑時でも「感覚を回復する」というコンセプトが崩れない運用が組めるかである。新店の話題は瞬間風速で終わり得るが、更新と運用が噛み合えば、原宿の選択肢過多の中でも“目的地化”の可能性が見えてくる。商業施設側にとっては、同種の複合テナントをどう評価し、どのKPIで波及まで含めて測るかという、次のリーシング設計に直結する事例として読めるニュースだ。以下、Quaro株式会社のプレスリリースから画像と店舗概要を引用。
オープン日: 2026年2月11日(水)
住所: 東京都渋谷区神宮前4丁目25−32
営業時間:08:00~20:00
アクセス:「明治神宮前」駅 徒歩4分、JR「原宿」駅 徒歩8分
https://maps.app.goo.gl/RuVnHQjsK1Mfe5c58
構成: 4フロア(カフェ/ロースティング/ノンアルコールミュージックバー/ギャラリー等)
コンセプト: 都市の中で“感覚を回復する”ためのコーヒー&カルチャースペース







