久世福商店、最大面積の旗艦店をイオンモール須坂に開業──「全品試食」がもたらす体験型食物販の可能性
2025年10月3日、イオンモール須坂の開業と同時に、株式会社サンクゼールが展開する「久世福商店」が旗艦店をオープンする。全国に約180店舗を展開する中でも、今回の須坂店は最大の売場面積(約82坪)を誇り、取り扱いアイテム数もブランド最多となる。だしや調味料、ごはんのお供など、日本各地の「うまいもの」を集めた同ブランドの中でも、象徴的な存在として位置づけられている。
最大の特徴は、店内全商品の試食が可能な売場構成にある(※一部調理が必要な商品を除く)。この取り組みはブランドとしても初の試みであり、食品SPA(製造小売)として“味に納得して買ってもらう”ことを重視する戦略が前面に打ち出された。食品小売における試食は部分的な導入にとどまることが多い中、全方位的に展開される試食機能は、リアル店舗ならではの体験価値として注目に値する。
試食によって滞在時間の長時間化を誘発し、商品との接触機会を増やすことで、購入の納得度と満足度を高める構造が生まれる。また、店舗内に大きく設けられた試食カウンターは、単なる試食の場にとどまらず、日本の食文化を体験できるイベントの開催拠点としても活用される予定だ。これは、物販にとどまらない“場としての価値”を施設内に創出しようとする商業施設戦略にも合致している。
さらに、地元・北信地域の食材を使った限定商品の展開も、同店舗の特徴のひとつである。開業時には、須坂市および周辺エリアに縁のある素材を活かしたオリジナル商品が4品リリース予定となっており、今後も地域との連携を通じた商品開発が継続される見通しだ。全国展開するブランドでありながら、地域生産者と生活者をつなぐローカルプラットフォームの役割を併せ持つ点で、地産地消の体現モデルとも言える。
久世福商店は2013年の誕生以来、“バイヤーが全国を巡り見出した「うまいもの」に新たな価値を加える”という理念のもと、ナチュラル志向かつ伝統を尊重した商品ラインナップで支持を拡大してきた。とくに食品添加物に過度に頼らず、素材の良さを引き出す製法や、手土産・ギフト需要にも耐えうる品質の高さが、多世代の生活者に支持されている。こうした背景もあり、食の安全性や信頼性を重視する中高年層やファミリー層に対して、試食によるリアルな接点のある売場は、共感と購買行動を直結させる導線として機能する。
今後、商業施設における物販テナントのあり方が変化していく中で、同店のような「体験型物販」への期待は高まる一方だ。食を通じた滞在価値の創出、地域との共創、ナチュラル志向への対応といった複合的なアプローチを融合させた久世福商店須坂店は、イオンモール須坂全体の来館動機を強化するテナントとして注目される存在となりそうだ。以下、株式会社サンクゼールのプレスリリースから画像と店舗概要を引用。
店舗名 : 久世福商店 イオンモール須坂店
開業日時: 2025年10月3日(金)10:00
場 所 : 長野県須坂市大字福島386番地1イオンモール須坂 1階
店舗面積: 272.65㎡/82.48坪