ゼインアーツが関西初の直営店を神戸三宮に開業 元スノーピーク取締役が設計した「固定費を持たない製造業」の3店舗目
アウトドアメーカー「ゼインアーツ(ZANE ARTS)」が2026年3月28日、神戸三宮に直営3号店をオープンした。長野県松本市を本拠とする株式会社ゼインアーツ(代表取締役:小杉敬)の運営で、既存の神保町・長久手の2店がスモールストアだったのに対し、神戸三宮は売場面積約165㎡(50坪)と大型テントの常設が可能な旗艦規模となる。関西エリアへの初進出だ。
このブランドを理解するには、創業者・小杉敬の来歴を押さえる必要がある。1993年にスノーピークに入社し、開発担当として複数回の在籍ののち、2014年に取締役執行役員企画本部長に就任。年間100アイテムをディレクションする立場から、2018年に退任・独立してゼインアーツを設立した。「自分のイメージと会社の方向性の違いを感じながら居続けるより、自分でブランドを立ち上げたほうが多くのユーザーと業界に貢献できる」という判断だった。
翌2019年4月に発売した第1弾4製品は初回ロットが即日完売。主力のワンポールシェルター「ゼクーM」は2020年度グッドデザイン賞ベスト100を受賞した。価格は同型テントの市場相場の約半額水準を実現している。その理由を小杉は明快に語っている——「直営店を持たず、物流も通販も自社でしない。メーカーとして作って売ることだけにフォーカスする」。余計な固定費を持たないことが、ハイスペック&ロープライスの構造的根拠になっている。
この戦略の意味は、アウトドア市場の変遷を重ねると鮮明になる。国内アウトドア市場は2019年に約5,169億円規模に達していたが、コロナ禍初年の2020年に一旦縮小。しかし2020〜2021年にかけて「三密を避けられるレジャー」としてキャンプ需要が急拡大し、オートキャンプ参加人口は2021年に750万人へV字回復した。「登山・キャンプ用品」市場も2022年にピークを迎え約2,540億円に達した。しかしその後は反動による調整局面が続き、2023年には約2,450億円と前年比3.5%減となり、参加人口も600万人へ減少した。テント輸入金額は2022年の304億円から2023年には228億円へ25%落ちた一方で、コロナ禍前の2019年(118億円)の約2倍水準は維持しており、「ブーム終焉」ではなく「高単価・コアユーザー中心の安定市場への移行」と見るのが正確だ。
この調整局面で最も大きなダメージを受けたのが、スノーピークだった。コロナ特需で売上高を2018年比2.5倍の307億円(2022年)まで拡大させた同社は、直営店・キャンプ場の積極出店と在庫積み増しが裏目に出て、2023年12月期に純利益が前年比99.9%減の100万円に急落。在庫回転率はピーク時の4分の1の1.24回転に沈み、2024年7月に上場廃止・MBO(ベインキャピタルが55%出資)へ至った。過剰在庫・積極出店による固定費増大・借入増という「三重苦」が原因として指摘されている。
ゼインアーツが取るアプローチはその対極だ。「投資をせず、売上と利益を作って、繰越金が増えたら次の一手を講じる」という資本効率重視の経営方針を小杉は明言している。Amazonや楽天への公式出品も行わず、公式ECと実店舗・取扱販売店に販路を絞る。今回の神戸三宮も神保町・長久手での収益蓄積を前提とした「次の一手」として位置づけられる。「アウトドア人口を増やす」というミッションの実現手段として、ロープライスによる間口拡大と直営店による体験提供を組み合わせる設計だ。
コロナ後の安定市場において、頻度・密度が高い「コアキャンパー」が残り、ブームで購入した用品を中古市場に手放した層が去った構造は、ゼインアーツにとって望ましい地盤でもある。残ったユーザーほどギアの質にこだわり、価格と機能の両立を正しく評価できるからだ。神戸三宮の立地は大型テントの常設展示が可能な50坪という規模で、「手に取ってもらう」という製品体験を提供する。関西の山岳エリアへのアクセス拠点でもあるこの地を選んだことは、アウトドアの本質的な需要に根ざしたリーシングの判断でもある。以下、同社プレスリリースから画像と店舗概要を引用。
⬛︎ 店舗情報オープン日:2026年3月28日(土)11時〜19時
定休日:火・水(祝日営業)
所在地:〒650-0033 兵庫県神戸市中央区江戸町98-1 東町江戸町ビル1F 102
電話番号:0263-87-2954(店舗総合窓口)






