スーパースポーツゼビオがあべのHoopに出店──百貨店系施設のモール化とともに進む「カテゴリ集約型MD」戦略
2000年代以降、都市型商業施設におけるテナント構成は大きな転換を遂げてきた。かつては小型区画の専門店が並び、感度の高い顧客の回遊性を前提としたMDが主流だったが、近年では1カテゴリを1ショップが担う「カテゴリ特化型・大規模区画」へのシフトが加速している。こうした流れを象徴する事例として、スーパースポーツゼビオのあべのHoop店出店が注目されている。
あべのHoopは、近鉄百貨店が運営する都市型商業施設で、2000年に旧「近鉄アベノ店新館(アポロ館)」の建替えを機に開業した。かつての百貨店新館が担っていた機能を刷新し、ファッションやカルチャーに敏感な若年層向けの商業施設として再構成されたのが、そのなりたちである。以降、天王寺・阿倍野エリアにおける重要な商業拠点の一つとして位置づけられてきたが、近年は商業空間全体の再定義を進め、2025年には全館的なリニューアルを実施している。
今回、5階フロアに出店する「スーパースポーツゼビオ あべのHoop店」は、単なるスポーツ専門店にとどまらない。ゼビオ株式会社が展開するスポーツ小売の複数業態──スーパースポーツゼビオ(競技用品)、エルブレス(アウトドア)、エクスタイル(スポーツカジュアル)──を集約したハイブリッド型店舗として設計されており、各カテゴリを横断的に取り扱う広域MDが採用されている。加えて、バスケットボールの専門ゾーン「ZONE OF HOOPS+」では、ジョーダンブランドやアシックスなど、専門性とファン層を意識した商品構成がなされており、競技経験者からライトユーザーまで多層な顧客に対応する空間となっている。
こうした「1カテゴリ=1テナント」の大型出店は、百貨店系商業施設のモール化傾向とも深く関係している。施設側から見れば、ゾーン全体を1社に任せることで、顧客導線・ブランド世界観・サービス設計までを一括でコントロールでき、施設全体のバリュー向上にも資する。一方テナント側にとっても、接客人員や在庫運用の最適化、OMOと連動した顧客体験設計が可能となり、出店戦略上の合理性が高まる。
また、近鉄百貨店が運営するという点も重要だ。百貨店業態の構造変化が進むなかで、Hoopのような別館商業施設では、ファッションだけでなく、ライフスタイル、ビューティ、アウトドアなど複数カテゴリを“専門ゾーン”化する再編が進んでいる。今回のゼビオ出店は、その象徴的事例といえるだろう。とりわけ阿倍野・天王寺エリアは、若年層からファミリー層、学生まで多様な生活者が集まる立地であり、「競技×アウトドア×ファッション」を融合させたゼビオの複合型MDは、高い親和性を持つと考えられる。
都市部の商業施設において、施設の“顔”となるような大規模専門ゾーンの導入は今後も進むとみられる。中小テナントの分散配置ではなく、カテゴリ単位で世界観を訴求するモデルが支持される時代において、あべのHoopの再編とゼビオの出店は、その方向性を示す一つのマイルストーンといえる。以下、ゼビオホールディングス株式会社のプレスリリースから画像を引用。