はるやま本ブランドがアリオ八尾に出店 重衣料業態のロードサイド撤退に象徴的変化
ビジネスウェア大手のはるやま商事株式会社は、2025年6月14日、大阪府八尾市の大型商業施設「アリオ八尾」3階に『はるやま アリオ八尾店』を新規オープンした。2024年8月に閉店した「はるやま八尾店」からわずか500m圏内への出店であるが、この出店は単なる移転ではない。重衣料業態のロードサイド店舗から商業施設インモールへのシフトという、スーツ業界における長期的な構造変化を象徴するものである。
これまでスーツ業界では、郊外型の広い駐車場を備えたロードサイド店舗を中心に展開してきた。しかし近年、団塊ジュニア世代のライフスタイル変化や若年層のビジネスウェア離れ、リモートワークの普及などを背景に、従来型スーツ需要は大きく減少。各社はこの約30年にわたり、「軽衣料」や機能性重視のサブブランドを打ち出し、都市部や大型ショッピングセンター(SC)への展開を強化してきた。
はるやまにおいても、「P.S.FA」などのサブブランドは早期から都市型モールでの店舗展開を進めてきたが、今回の出店は同社のメインブランドとしての「はるやま」が、ファミリー中心の広域集客型モールであるアリオ八尾に出店した点で大きな意味を持つ。これまでロードサイドで支えてきた中高年層の顧客基盤を維持しつつ、ニューファミリー層を新たに取り込むためのリブランディングの一環である。
アリオ八尾は、近鉄八尾駅から徒歩圏に位置し、MOVIX八尾をはじめとする高い集客力を持つテナントが揃う関西有数の商業施設である。年間来館者数は約1,000万人を誇り、周辺には東大阪市や柏原市といった広域からの来訪も見込まれる。中でも30代~40代の共働きファミリー層が主なターゲットとなっており、今回の『はるやま アリオ八尾店』はその層に向けた商品構成と売場設計がなされている。
同店では、「NEW BIZ WEAR」をコンセプトに、カジュアル化と機能性を両立したビジネスウェアを提案。メンズでは「TOKYORUNセットアップ」や「KATHARINE E HAMNETTポロシャツ」、レディスでは「INDIVI」や「アイスーツ」といった機能美とスタイル性を兼ね備えたアイテムを展開する。これらの商品は通勤着としてだけでなく、日常使いも可能なデザインとなっており、ファミリー層の多様なライフスタイルに寄り添う構成となっている。
また、レディス比率が3割と従来型スーツ店舗よりも高めに設定されており、女性のビジネスパーソンへの訴求強化も図られている。商品価格帯も1万円台後半から2万円台前半のセットアップ中心とし、都市型SCでの買い回り需要や価格感覚にフィットする設定がなされている。
今回のアリオ八尾への出店は、スーツ業界における本格的な転換期の一例といえる。これまでツープライス型や機能性訴求のサブブランドが担ってきた「商業施設内でのビジネスウェア販売」という舞台に、いよいよ本ブランドも本格参入しはじめた。ロードサイドからインモールへの移行が最終段階を迎える中、重衣料業態の今後を占う上で、今回の出店は注目に値する動きといえる。以下、株式会社はるやまホールディングスのプレスリリースから画像を引用。