がってん寿司、静岡初出店──ららぽーと沼津に見るモール戦略の深化
埼玉県熊谷市に本社を構えるアールディーシーが展開する「がってん寿司」が、2025年9月17日、静岡県に初進出する。出店先は三井ショッピングパークららぽーと沼津。グループが長年培ってきた商業施設出店のノウハウを生かしつつ、独自のポジショニングを維持する姿勢がうかがえる。
がってん寿司は1980年代に元禄寿司のフランチャイズとして始まり、1995年に屋号を独自ブランドへと転換。以後、「がってんしょうち!」の掛け声と職人の目の前で握るスタイルを特徴に、グルメ回転寿司という新たな領域を切り開いた。現在では国内94店舗、さらに上海・韓国・香港・台湾など海外48店舗に展開するなど、広域チェーンとしての地位を築いている。
商業施設との関わりでは、これまでイオンモールやららぽーと、PARCO、テラスモール湘南など各地の大型モールに積極的に出店してきた。回転寿司市場においてはスシローやくら寿司、はま寿司など大手チェーンが席巻する一方で、がってん寿司は「鮮度を売りにしたグルメ系回転寿司」という独自の立ち位置を確保。モール内においてもフードコート業態とは一線を画し、専門店区画に高単価帯で展開するパターンを確立している。
今回の静岡出店地である沼津は、漁港を抱える水産都市としての強みを持つ。地元には「沼津魚がし鮨」に代表される地場ブランドが存在し、鮮度や産地感を重視する消費者の目は厳しい。そうした環境に挑むがってん寿司は、全国の漁港から市場を介さず直送する仕入れルートや、豪州での自社買付けによるみなみまぐろ、自社飼料で育てたがってん真鯛など、ブランド独自の調達・商品開発力を前面に打ち出すことで差別化を図る。
ららぽーと沼津は2019年に開業した静岡東部最大級の商業施設で、広域集客力を備えている。施設内ではファミリー層から観光客まで幅広い層が回遊しており、がってん寿司の強みである“職人の技を目の前で見せる体験”は飲食フロアに新たな彩りを添えることになる。地場競合との共存を視野に、観光とショッピングの動線を捉えた展開は、同ブランドの存在感をさらに高めるだろう。
商業施設内での展開において、がってん寿司は単なる集客依存型ではなく、自社のバリューチェーンを武器とした「鮮度・体験型の差別化業態」として位置づけられる。モール内出店の経験を積み重ねてきた同社にとって、静岡初進出は地方中核都市での広域集客と地場ブランドとの競合を同時に試す場となる。全国規模での拡大と地域ごとの嗜好をどう両立させるか、その戦略の実践が注目される。以下、同社のプレスリリースから画像と店舗概要を引用。
【新店舗情報】
【店舗名称】がってん寿司 ららぽーと沼津店
【所在地】 〒410-8541 静岡県沼津市東椎路字東荒301番地3 ららぽーと沼津1階
【電話番号】 055-957-6231
【営業時間】 月~金11時00分~21時00分(ラストオーダー20時30分)
土日祝 11時00分~22時00分(ラストオーダー 21時30分)