「MARK IS 福岡ももち」過去最高更新の意味 広域集客型モールが“日常使いSC”へ重心を移し成果を拡大
MARK IS 福岡ももちの2025年度業績は、売上高219億円、来館者数1,170万人となり、いずれも過去最高を更新した。しかも2023年度以降、3年連続で売上高・来館者数ともに前年度を上回っている。2024年度が売上高195億円、来館者数1,149万人だったことを踏まえると、この1年でさらに上積みした形だ。施設規模は約13万㎡、160店舗体制で、みずほPayPayドーム福岡に近接する福岡有数の大型商業施設である。
今回のニュースの芯は、イベント立地の強い大型モールが、広域集客だけに依存せず、足元商圏の来館頻度を高める「使い勝手のよい親しみある施設」へと運営の重心を移し、その戦略が数字で実証された点にある。リリースでも同館は、コロナ禍を経た2023年度以降、「地域における真のお役立ちSC」を目指してきたと説明しており、2026年度計画でも足元商圏の集客と来館頻度の強化を最優先に掲げている。
この変化は、2024年度と2025年度の施策比較を見るとわかりやすい。2024年度は、開業以来最大級のリニューアル、ファッション系アウトレットの集積、マクドナルド復活、キッズ向けアミューズメントやBYD導入、IPコンテンツイベントなど、広域集客や話題化を意識した色合いが強かった。これに対し2025年度は、2024年秋リニューアルの定着効果に加え、飲食強化、地域参加型イベントの継続開催、施設専用のプレミアム付電子商品券販売といった、日常利用の接点を増やす施策が前面に出ている。
特に大きいのは、リニューアルを単発の改装で終わらせず、館の使われ方そのものの再設計につなげたことだろう。2024年秋の全17店舗・約2,800㎡のリニューアル区画が2025年度は通年で稼働し、衣料品売上は前年比117.8%を記録した。前年に新たなファッションゾーンを整えたうえで、その成果を翌年度に刈り取った格好であり、改装効果が一過性ではなかったことを示している。
ただし今回さらに重要なのは、ファッションだけではなく飲食の伸びが施設全体の再成長を下支えしている点だ。飲食売上は前年比108.9%で、フードコート依存ではなく、若年層に強いファストフードや、ファミリー・シニア・単身客まで取り込める定食業態の導入が効いたとされる。実際、2025年には「博多めんたいやまや食堂」や「おぼんdeごはん」が開業しており、特別な来館理由よりも、普段使いしやすい食の選択肢を厚くしたことが読み取れる。大型モールが安定的に売上を積み上げるには、目的来館型の強い店だけでなく、反復利用を生む“日常の理由”が必要であり、その補強が進んだと見てよい。
販促面でも、同館は明確に頻度戦略へ舵を切っている。2025年度は年間90日以上、約250回のイベントを実施し、子育てや防災など生活密着型の企画を毎月開催した。大型連休にも地元店舗や学校、団体と連携したイベントを連日展開し、イベント実施日の来館者数は平日・休日とも前年比115%、GWは来館者数前年比約104%で売上前年比約116%、夏休みは来館者数前年比約114%で売上前年比約126%となった。つまり、来館者を増やすだけでなく、来館時の購買まで押し上げる販促に育っている。
施設専用のプレミアム付電子商品券も象徴的だ。2025年10月に1万円で1万2,000円分使える商品券を発行総額1.2億円分販売し、開始1週間で完売した。しかも今回はMARK IS 福岡ももち単独で使える形式が初めてで、スマホ申込みや決済に不慣れな層向けに対面ブースやコールセンターまで整備している。これは単なる販促ではなく、地元客を確実に館内消費へつなぐ仕組みづくりであり、年末年始商戦を下支えした点でも運営の実務力が出た施策だった。
立地面を見ても、この方向転換には合理性がある。MARK IS 福岡ももちはPayPayドームやヒルトン福岡シーホーク、福岡タワー圏に近く、2024年度の計画では観光資源やインバウンドを生かした広域集客を前面に掲げていた。一方で2025年度リリースでは、天神・博多を中心とした都市開発の進展と増加する都市圏人口を踏まえ、より日常的に使われる施設像を打ち出している。福岡市全体の人口は2025年4月1日時点で約166万人で、都市の成長を背景に、目的地型モールから生活接点型SCへの比重調整を進める判断は自然だ。
商業施設ニュースとして見ると、これは「過去最高更新」の景気のよい数字そのものより、モール運営の勝ち筋が変わってきたことを示す案件である。ドーム隣接という強い非日常立地を持ちながら、実際に伸びを支えたのは、改装によるMD再編、日常使いしやすい飲食導入、地域イベントの継続、商品券による館内消費の囲い込みだった。大型施設が観光・エンタメの一発集客だけでなく、日々の利用頻度をどう積み上げるか。その答えを、MARK IS 福岡ももちはかなり明快に示し始めている。以下、三菱地所プロパティマネジメント株式会社のプレスリリースから画像を引用。





